友情のカタチ




 守護聖全員が集まっての、恒例の定例会議。
 今日はクラヴィスも出てきて珍しく9人とも揃った日だった。


「・・・んだよ! っざけんな!!」
 ちょっとしたジュリアスの注意が癇に障ったゼフェルが大声をあげた。

「ゼフェル!」
 ルヴァの制止も聞かず、その場からゼフェルは走り去ってしまった。
 おろおろするルヴァにランディが近づく。
「俺、行ってきます。」
「ランディ・・・」
 ランディも追いかけてそこから出て行った。



「ゼフェル!」
「・・・んだ ランディ野郎かよ・・・・・・」
 ゼフェルには聖殿から出て少しした所で追いついた。
 1度振り返ったけれどすぐに彼は視線を元に戻す。
「ゼフェル。早く戻らないと・・・」
「1人で戻れよ。オレは戻る気なんかねーからな。」
 スタスタと本当にその場から去ろうとした。
「待てよ!」
 行かせまいと思わずマントを掴む。

 グイッ

「いっ!?」
 急に逆向きの力が働いたせいでゼフェルはバランスを崩しかけた。
「何すんだ このバカぢからが!!」
「あ、ごめん。」

 パッ

「げっ!? 急に離――――」
 ランディが慌てて手を離すと今度はその反動で後ろにこけてしまった。
「〜〜〜っっ! ・・・おめーは一体何がしたいんだよ!」
 痛む腰を押さえ立ちつくす彼を怒鳴りつける。
 これでは連れ戻しに来たのかさらに煽りに来たのかわからない。
 元々気が長い方ではない彼にとって、それは怒りを倍増させるには十分だった。
「もう ぜってー行かねーからな!」
 立ち上がる気にもなれなくてその場に胡座を決めこむ。
「・・・ゼフェル、戻ろう。」
 けれどそんなもので諦めるような彼ではなかった。
 というか自分のせいでさらに機嫌を悪くしたのにも気づいていない。

「離せ!コラ!!」
 腕を掴まれても抵抗するゼフェルを問答無用で立ち上がらせる。
 力は当然ランディの方が上だ。
「戻ってジュリアス様に謝るんだ。」
「・・・・・・・・・はぁ?」
 ちょっと待て。何でオレが謝らなきゃなんねーんだよ。
「さっきのはお前も悪い。」
「っ勝手に決め付けたのはあっちだろ!? 何でオレが!」
 オレが謝ってあいつが謝るのかよ!?
 そんな事ありえない。
 謝った時点でオレが悪いって事になるんだ。それは自分の非を認めるのと同じ事。
 冗談じゃない。
「とにかく戻るんだ。」

 ブチッ

「誰もがおめーみたいなヤツだと思うなよ! この単純バカ!!」
 掴まれた腕をムリヤリ振り払う。
「ゼフェ・・・」
「お節介野郎にはこれ以上付き合ってらんねーよ!」
 今度こそ本当に行ってしまった。
 けれど今度はランディも追いかけない。
 今言われた事が頭で何度も繰り返されている。
「また、やったのか俺・・・」
 呟いてランディは後悔したように頭を掻いた。


 くそっ イライラする!
「全部あの野郎のせいだ・・・」
 公園の木陰で寝転んでいれば眠れるかと思ったが、さっきの怒りがまだ収まらなくて眠くもならない。

 キラッ
「・・・?」
「ゼフェル様? こんな所にいらっしゃったんですね。」
 彼女がひょこっと顔を出す。
 今光ったと思ったのは金の髪で大きな瞳がこちらを覗き込んでいる。
「・・・何か用かよ。」
 見上げた彼女の片手には育成のための本が数冊。
 息抜きにココへ来てみたという所か。

「いえ、別に。ただ今日はランディ様達とご一緒じゃなかったので・・・」
 ピクッ
 今の彼にこの名前は禁句。
「何でオレがアイツらと一緒にいなきゃなんねーんだよ!」
 起き上がって叫ぶ。
 ちょっと驚いた様子で彼女は思わず身を引いた。
「・・・ランディ様とケンカでもなさったんですか?」
「その名前を言うな!」
「きゃっ ・・・私に怒らないで下さい〜。」
 確かにそうだがその名前を聞くとどうしても怒りを堪えきれない。

「だいたいあの野郎がウルサイからムカツクんだよ!」
 話を聞くと彼女が横に座ってきたので、ゼフェルはここぞとばかりにランディへの不満をぶちまける。
 何かといっちゃジュリアスみたいに小言言いやがるし。
 たかが1つ年上なだけで兄貴気分だし。
 正義のヒーロー気取りで自分が正しいと思ったら絶対に曲げない。
 その上オレにまでそれを強要してくる。
「ふざけんなよ全く・・・」

「・・・ゼフェル様って―――・・・」
 黙って聞いていたアンジェリークが不意ににこっと笑った。
「意外と鈍いんですねv」
「なっ・・・!?」
 そんなもんお前に言われる筋合いはねーぞ!?
 言おうとする前にアンジェリークが尋ねる。
「ゼフェル様は何に対して怒ってらっしゃるんですか?」
「・・・そりゃ あの野郎がよけいなお節介やくから・・・・・・」
「では ランディ様がどうして追ってきたのかお気づきですか?」
 お節介やくためだろ。
 不機嫌そうにそっぽを向いて
 そう答えたゼフェルにアンジェリークは困ったように笑った。
「ゼフェル様・・・隠された言葉の意味に気づいて下さい。少しわかり難いかもしれませんけれど・・・・・・」
 隠された意味、ねぇ・・・
 フンと鼻で笑う。
 あの単純頭の言葉にそんなもんがあったら見てみたいぜ。
「・・・信じてませんね?」
 笑われたのでちょっとムッとする。
「お前アイツの事買い被り過ぎてねーか?」
「ませんっ! 聞いてみればわかりますよっ。―――というわけで・・・ランディ様ー!」
「!!?」
 突然立ち上がって公園の散歩中だった彼に手を振ってこちらへ呼ぶ。


「アンジェリーク?」
 何も考えずランディはこちらに向かってきた。
「何か用かい?」
「いえv 私ではなくゼフェル様がvv」
 彼女の言葉に不思議そうにしながら視線をゼフェルに移す。
「ゼフェルが?」
「おめーな・・・っ!?」
 言おうとしても彼女はにこにこ笑っているだけ。
 何言わせたいんだよコイツはっ!

「オ、オレは別に・・・っ!」
「・・・ゼフェル。さっきはゴメンな。」
 何かを言う前にランディの方が言ってきた。
「・・・・・・な、何だよ急に。気持ち悪ぃな。」
 余りに意外すぎて。
 素直に返せなかったけれどランディは怒らない。
「俺 すぐ余計な事言っちゃうからさ・・・ それでさっき機嫌悪くしたんだろ?」
 心から反省している様子だ。
「一緒に謝りに行こうだけで良かったんだよな・・・」
 ついて行って一緒に怒られるから。だから戻ろうって。
「―――おめーらしくもねー。ランディ野郎ならそんな事さっさと忘れちまえよ。」
 言い方はきついけれど顔が赤いからきっと照れ隠し。
 隣でアンジェがクスクス笑っている。

 "戻ろう"って一緒に謝りに行くって意味かよ。わかりづれーなぁ。
 ま、仕方ねーか。ランディ野郎なんだから。

「―――・・・」
 コイツの言う通りか―――

 ちらっとアンジェリークの方を見て
 この普段はドジでとろい女王候補の意外な鋭さに完敗したと思った。


「―――言っとくが オレ、ジュリアスには謝らねーからな。」
「ゼフェル!?」
 俺も一緒に行くって今言ったのに。
「言ってもあの野郎が謝るわけじゃねーし。オレだけが悪いんじゃねーから謝らねーよ。」
 ランディ野郎のわかりづらい親切心はわかったがそれで何が変わるってわけじゃない。
 ジュリアスはやっぱりムカツクしランディ野郎はお節介だ。

 何も変わっちゃいない。
 だけど少し、アイツの言ってる言葉が聞こえるようになった気がする。



−END−



<コメント>
ごめんなさーい・・・
ばななちゃーんι 遅い上にコレはダメよねぇ・・・
リクは「友情」な2人だったんですが。
何かが違う・・・ けっこう難しい この2人で友情は。
いつもケンカばっかりで、でも認め合って・・・なさげなんで辛いです(苦笑)
あと、最後にアンジェでオチつけようかとも考えたんですが。止めました。
ゲームシステムがわかんないとダメだったんで。

―――それで、えっと書き直しました。
あんま変わってない気もするけど(爆)
しょせん私はランディ好きさっ!!(開き直り?)




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