11:ガンダムSEED3(アスキラ)

 
「桜…綺麗だね。」

 薄桃色の吹雪が舞う。
 見上げて呟くキラの横顔に胸の痛みを感じて、思わず華奢な肩を引き寄せた。

「アスラン?」
「…俺は、散る桜はあまり好きじゃない。」
「どうして?」
 大きな藤色の瞳が疑問の色で見つめてくる。
 こうしているとキラしか見えない。それに少しだけホッとした。
「……別れの日を思い出す。あの時手を離さずに連れ去れば良かったと思ってしまう。」


 そうすれば… あの時の別れさえなければ。
 敵として会うことも、戦うことも…苦しむこともなかった。

 1人悩む夜には何度も悔いた。
 だから、あの日を思い出す桜が散るのは見たくない。


「お前と殺し合うなんてもう2度とゴメンだ。」
 だから、お前を2度と離したくない。



「僕は―――…アスランと戦ったことも意味があったんじゃないかと思う時があるよ。」
 アスランとは全く逆のことをキラはふと口にした。
 固まるアスランの腕の中でキラは言葉を続ける。
「君じゃなかったら疑問に思わなかった。悩んだりもしなかったし泣くこともなかった。」
「キラ…?」
「何も考えずに人を殺して、敵は敵でしかないままで。そのまま殺し続けて、あの人が望
 む世界になっていたかもしれないって…」


 全てを憎み、世界の滅びを望んだ男がいた。
 キラはそれを否定して明日を望み、そして世界は明日を手にした。

 

「…それでも俺は、この手を離したことを悔やむよ。」
 キラの手を掬い取って指を組む。
「俺は一度お前を殺した。お前が許してくれても俺は俺を許せない。」
「アスラン…」
 するりと手を解いたキラが、腕の中で身を捩って抱きついてきた。
「大丈夫だよ。もう離れないから。」
 胸に埋めたせいで顔は見えないけれど、その声は柔らかくて優しい。
「僕は桜、好きだよ。見る度に君の笑顔を思い出したから。」
「キラ、」
「―――これからは別れた日じゃなくて、今日のことを思い出して。」


 顔を上げたキラは、その声のまま綺麗に微笑む。


「大好きだよ、アスラン。」







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種が3つなのはやっぱり愛の長さ故ですね。
でも寝被ってたのでよく分からない話になりました…(汗)
アスキラで短いネタって難しいです…


    
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