ある朝の1コマ




 食器同士のあたる音と鍋がコトコト煮る音。
 ごく普通の穏やかな朝の風景がそこにはあり、ゆるやかに朝の時間は流れていた。

「三蔵、はいお味噌汁です。」
 コトンと八戒がお椀を置く。
「ああ・・・」
 眼鏡をかけ、いつものように新聞に目を通していた三蔵はそちらを見ずに適当に返事をする。
 しかし、特に何も考えずにコーヒーのカップを手に取り、一口飲んだところで彼の動きが止まった。
「―――おい。」
「はい?」
 次のお椀に入れようとしていた八戒が後ろを振り向いて聞き返す。
「・・・トーストとコーヒーに味噌汁はないだろうが。」
「でもやっぱり朝はお味噌汁でしょう。」
「―――・・・俺はいらん。」
 これ以上抗議しても無駄そうだったので一言だけ言って新聞に視線を戻した。
 仕方なく八戒は鍋にそれを返す。
「せっかく作ったのにもったいないですね。」
「・・・とにかく味噌汁なら白飯の時にしろ。」
「そうですね、今度からはそうします。でも折角ですから悟浄達には食べさせましょうか。」

「・・・ところでそのバカ共はまだ寝てるのか?」
 時計はすでに遅刻ギリギリのところを指していた。
「2、3度ほど起こしたんですけどねー。」
 八戒も心配そうに時計を見て言う。
「・・・まああいつらが遅刻しようが俺には関係ないが。」
「そうですね、別に僕らは困りませんしね。」

「あいかわらず冷たいねー、おめーら。」
 眠そうにあくびをしながら悟浄がやっと起きてきた。
「・・・遅い。」
「いーじゃん、どうせ1限体育だしフケるつもりだから。」
 椅子を引いてドカッと座る。
「悟浄、お味噌汁吸いますよね? あと三蔵、そこで新聞読むのはやめて下さい。どこかの親父みたいですよ。」
「・・・・・・・・・」
“親父みたい”という言葉に反応したのか、黙って新聞をたたみ横に置く。
「おや、三蔵サマったら気にしてたの?」
「・・・殺すぞ。」
 悟浄がからかって言った言葉に殺気のこもった瞳で返事を返した。
「あら怖い。」
「・・・・・・・・・」
 こめかみの辺りに四つ角が浮き出て、三蔵が無言で銃を取り出す。
「三蔵、それはさすがにまずいと思いますよ。」
 まだ朝早いですし。
 などと言いながら彼の表情はにこにこ笑っている。


 ドタバタドタドタ

「遅刻だー!」
 騒がしい足音とともに悟空が2階から下りて来た。
「なんで誰も起こしてくれないんだよーっ。」
 イスに座ってとりあえず急いで朝食を食べ始める。
「僕が2、3回起こしましたよ。」
「毎日同じ事を言う暇があったらたまには独りで起きてみろ。」
「うっ・・・」
 相手の言い分の方が正しいので何も言い返せない。

「・・・なあ三蔵、今日くるま・・・・・・」
「却下。」
「まだ最後まで言ってないじゃんかっ!」
 悟空の抗議にも動じない。
「誰がわざわざ反対方向まで送ってやるか。」
「むーっ! ケチっ!」
「ぐだぐだ言ってないでさっさと学校行け。」
「あーっ! 遅刻だ! じゃあ行ってきまーす!」
 ムリヤリ最後の一口を飲み込む。
「あ、悟空! 僕今日帰り遅いんで代わりに洗濯物取り込んでおいて下さいねー。」
「わかったー。」
 カバンを乱暴に掴み、どたばたと慌しく出て行った。
「・・・・・・あいつがいると騒がしいな。」
「それが悟空の取り柄ですから。」
 笑顔で八戒が言い、三蔵は無言で立ち上がる。

「・・・行って来る。」
「おや、もうですか?」
「たまには気分転換に遠回りするのもいいだろう。」
 含みのある八戒の言葉も否定しない。
 横のイスにかけてあった上着をひっかけ、車のキーを取るとさっさと出て行った。


「・・・悟空には甘いな、あいつも。」
 玄関のドアが閉まる音がした後で悟浄が言った。
「くすっ、何だかんだ言ってもかわいくて仕方ないんですよ。」
「・・・俺も一緒だったらきっと送っちゃくんねェだろうな。」
「悟空だけの特権ですね。」

 こうしていつものように朝の時間は流れていく―――――・・・




fin




<コメント>
初書きなんでヘボヘボ(泣)
ちびちび直してみたけどあんまし直すと問題アリかなぁって思って。
もう見たくない過去だし・・・
三蔵親子は仲がよろしくて良い(笑)
でもこの設定だと悟空は高1(16)で三蔵が25、6だからホントは親子じゃないっすよ。
そして何故4人が一緒に住んでいるかは・・・まぁおいおいに。



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