綺麗な涙 彼女の涙は僕の為 「泣かないで」 涙に濡れた眦へ唇を寄せる。 「大丈夫だから」 甘い声で囁いて、キラキラと光るそれを掬って舐め取った。 彼女はわりと涙もろいけれど、いつ見ても彼女の涙は美しく愛しい。 それが僕の為なら尚更。 彼女の優しさが詰まった涙はどんな宝石よりも輝いて見える。 「だって、怪我…してるのに…」 彼女はそう言って血が滲む僕の腕を見つめる。 彼女を庇って受けた矢が僅かに掠ったのだ。 その赤色を見て、また彼女の目に涙が浮かんだ。 こんなもの、"狼陛下"にとっては小さな傷だ。 この程度なら血はいずれ止まる。 「君がケガをするより痛くない。」 君を守れたことの方が大事。 ちゃんと守るって最初から決めていた。 …今はもっと その気持ちが強くなったけれど。 「何を言ってるんですかっ」 泣きながら、それでも怒ることを忘れないのはさすがだ。 彼女は怒った顔も可愛い 全ての感情は僕の為だから 「大丈夫」 何度も同じ言葉を繰り返し、同じ行為を繰り返す。 君の涙が止まるまで――― お題:「涙に濡れた眦へ」
--------------------------------------------------------------------- 実際のところ陛下が怪我するとか有り得ないんですけど。 夕鈴の為なら怪我しても気にしなさそうだよなぁとか思うわけです。 うんでも陛下、その行為はどうかと思うのですが。 我に返った夕鈴の反応がとても気になります(笑) 2011.1.29. UP