「夕鈴からキスしてくれたら諦める。」 「そそそ…そんな!」 黎翔の言葉に夕鈴は心底狼狽した顔で声を上げた。 ある日の夜の攻防戦。 話が逸れに逸れてそんなことになった。 「どっちが良い?」 どちらも恥ずかしいです!と言われるが、これ以上引くつもりはない。 せっかくのチャンスを逃すなんて勿体無いし。 だから黙って見つめて返事を待つ。 「〜〜〜わ、分かりましたッ」 ついに耐えかねて彼女の方が折れた。 さて、どっちかな? 「目を瞑ってください!」 どうやらキスの方らしい。 (…抱き枕よりはお休みのキスの方がすぐ済むもんね。) どっちになっても得をするのは黎翔の方だと夕鈴は気づかない。 そんな素直さがまた可愛いと思って内心で笑った。 ちゃんと目を閉じると、おそるおそるといった感じで腕が肩に触れてくる。 首に回してくれても構わないのにな…と思いながら、重みがかかって。 ―――柔らかな唇がそこに触れた。 「こ、これで良いですか!?」 ぱちりと目を開けると彼女は至近距離で顔を真っ赤にしている。 可愛くて抱きしめたくなったけれど、やってしまうとたぶん…というか確実に逃げられ そうな気がして我慢した。 感触が残る頬に指先で触れると まだじんわり熱を感じる。 本当は唇のつもりだったんだけど、彼女にはそこまでが限界だったらしい。 ちょっと期待と違った。 でも、彼女からしてくれただけでも貴重なこと。 だからそこは妥協することにしよう。 お題:「妥協して頬へ」
--------------------------------------------------------------------- 妥協したのはされた方という(笑) 一体どこでどう話が逸れたらこんなことになるんでしょう? 私的に絶対陛下の誘導尋問だと確信しています(笑) 2011.1.30. UP