もしも世界が終わるとしたら、僕は――――… 「もしも、ね… だったら自分の好きなようにしたいな。」 他愛もない会話の流れでもしもの話になった。 たまたま今日は侍女達とそんな話をしていたらしい。 「最後くらい、自分の意志を通しても良いだろう?」 狼の顔で薄く笑うと、夕鈴は珍しく呆れ顔で見返してきた。 「いつも通している気がしますが…」 心外だなと思う。 「王なんて我慢ばかりだ。」 「?」 怪訝な顔をする彼女は僕の言葉を信じていないのだろう。 王は全てを持ち、王に手に入らないものはない。 それは真実ではある。しかし全てではない。 本当に手に入れたいものは、この手からこぼれ落ちる運命にあるのだから… 「陛下は何を我慢していらっしゃるんですか?」 無邪気な問いは時に残酷だ。 君がそれを聞くのかと、言いたくなる。 …言わないけれど。 「何だと思う?」 飲み込んだ言葉の代わりに問いかける。 戯れの言葉遊びのような問い。 笑うことで誤魔化して、己の気持ちを裏に隠した。 「分かりません。」 からかわないでと怒って、彼女はふいっと顔を背ける。 その横顔さえも愛しく思う。 けれど、見つめる瞳の奥の熱に彼女が気づくことはない。 君はいずれいなくなる。 望むものは手に入らない。 力尽くで手に入れようとすれば、君の心を失ってしまう。 私が欲しいのは、君の心ごと全て。 だから願う。有り得ない夢を。 ―――もしも明日世界が終わるとしたら、 僕は王であるよりも君の傍を選びたいと願う。 …真面目な君はきっと怒るだろうけどね。 @もしも明日世界が終わるとしたら(夕鈴ver.) 明日世界が終わるとしたら… 私は何を望むだろう? 陛下は自分の好きなようにしたいと言った。 それが何なのかは言ってくれなかったけれど。 私なら―――… みんなと過ごしたいと思う。 大切な家族と、友人と。最後まで一緒にいたい。 ……もし良いと言ってくれたなら、陛下も一緒が良いな。 なんて、馬鹿なことまで思ってみたり。 あの人は好きなようにしたいと言ったから無理かしら? まあ、"もしも"だし良いわよね。 李順さん、最後の日くらい怒らないでね。 柳方淵とも喧嘩はしたくないわ。 浩大は最後まで何か食べてそうね。 老師はきっと、最後まで元気だと思うわ。 紅珠は泣くかしら? だったら慰めてあげないと。 青慎も一緒に。あの子は優しいから、きっと紅珠も笑ってくれるわ。 みんなみんな一緒が良い。 几鍔は入れてあげないの。陛下と喧嘩しちゃうから。 でも、喧嘩しないなら良いかしら。 …1人は嫌だわ。寂しいもの。 それだけは絶対嫌。 --------------------------------------------------------------------- もし予言者が現れてそう言っても、陛下は信じなさそうな気がしますが。 で、考えてみたら結局夕鈴なんだなと思います。 陛下が好きなようにしちゃったら夕鈴が大変ですね。 受け入れられるかなぁ… それ以前に受け取れるかどうかですか。 オマケは夕鈴にも同じお題を考えてもらいました。 微妙にかみ合っていない2人希望。 陛下は夕鈴以外はどうでも良くて、夕鈴はみんな大切で。 陛下はそんな夕鈴がもどかしいけど愛しいんですよ。 と、夢見てみました。もしもだから良いよね!? ―――と、"もしも"なので、今回のお題はどれも好き放題に遊んでみました。 何を思ったか全てのお題で2つ話を作っていたり。 1つでもお気に召したものがあれば幸いです。お付き合いありがとうございました。 2011.4.30. UP