回廊を1人で歩くお妃ちゃんの姿を見つける。 ちょうど良いと思って、屋根を渡って彼女のすぐ横の柵に飛び降りた。 「!? あ…何だ、浩大。」 突然現れたオレに吃驚したお妃ちゃんは、オレだと分かるとホッと胸を撫で下ろす。 …同じことする奴が他にいたら困るけどさ。 仕事サボってたって陛下に殺されるヨ。 「お妃ちゃん、ほいこれ。」 手にした花の飾りを彼女に放り投げる。 それは狙い通りに彼女の手の上にきれいに納まった。 「えっ あれ?」 受け取ったお妃ちゃんが自分の頭に触れる。 そこで初めて片方の飾りがないことに気づいたらしかった。 「いつの間に落としたのかしら。ありがとう、浩大。」 そう言って自然に笑うこの娘は、本当に普通の普通の女の子。 それなのに、狼陛下に真正面からぶつかったり、屋根に上るような無茶を突然やらかした り。 いろんな意味で目が離せない。 「…でも、貴方って本当にいつもどこにでも現れるわね。」 自分で髪飾りをつけながら、どこか呆れた声音で言われた。 「そりゃ隠密だからね。」 密かにお妃ちゃんの護衛をしていることは言わない。 陛下に口止めされているからだ。 「周りのことを常に把握しとくのも仕事だヨ。」 「ふーん、そういうものなの。」 素直なお妃ちゃんは適当に繕った言葉でもあっさり信じてくれた。 こんなに騙されやすくて良いのかなって思うくらいお人好しで善良な娘。 でも、陛下にとっては大きな存在になってる不思議な娘。 狼陛下に嫌われたくないと思わせるほどの特別な存在。 家出して陛下をベコベコにヘコませて、冷酷非情の狼陛下を普通の男に戻してしまう。 何をしても許されて、さらには「全部守りたい」とまで言わせた。 彼女のどこが陛下の琴線に触れたのかは分からない。 見てて面白いのは確かだけど。 …どちらかというと陛下の方が見てて面白かったりするけど。 (ま、オレは珍しくて面白い陛下がたくさん見れるなら何でも良いけどさ。) もっともっと見てみたいから。 ―――お妃ちゃんはそのまんまでいてほしいなー 2011.11.1. UP --------------------------------------------------------------------- 5巻が出たので出せるようになりました☆ いろんな意味で使い勝手のいい子です。 彼は夕鈴より年上なのかが気になるところです。