『―――可愛い、面白い。』 それが夕鈴に対する最初の印象。 くるくる変わる表情と予想外の行動。 今までにない経験が楽しくて、つい引き留めてしまった。 君といると、どんな場所でも楽しいしどんな状況でも楽しめる。 このままでいたいなと、何度願ったことだろう。 でも君は本当に予想外で、なかなか思うようにいかない。 我が儘いっぱい叶えてあげたいのに、全然言わないどころか頼ってもくれないし。 言ってくれたと思ったら僕のためだったし。 『どうやったら、君と長く一緒にいられるかな?』 そんなことをずっと考えている。 でも君は"狼陛下"を怖がっているから。 いつかは離れて行ってしまうんじゃないかって。 僕はそれが怖いんだ。 君が僕の前から消えること、それが1番怖くて。 どこまで触れて良いのか、どこまでだったら許されるのか。 時に失敗して怖がられて逃げられて、その度に臆病になっていく。 『嫌われたくない、怖がらないで。』 受け入れてとは言えない。 だからせめて嫌いにならないで。 君が傍にいてくれるなら、それ以上望まないから。 「陛下、お帰りなさいませ。」 これは"妃"の顔。 それでも心を込めて僕を出迎えてくれる。 「お疲れ様です。」 人払いをして一息つくと、今度は夕鈴自身の言葉で。 そうしてそっと湯気の立つ器を手渡された。 「…この瞬間が1番ホッとするね。」 ふと呟くと彼女が微笑む。 そんな他愛もないことが嬉しいだなんて、君は知っているかな? 今のこの生活を壊したくない。 それには君がいないとダメなんだ。 君がいるから僕は見失わずにいられる。 君がいないと僕は光を見つけられなくなる。 ―――だからここにいて、もう少しだけ。 2011.11.1. UP --------------------------------------------------------------------- フィルター最大出力(笑) この祭りの本命ともいえる陛下編でした。 最初は結構積極的だったんですが、最近は引いてる気がするんですよね… 言葉も態度も甘いんだけど、どことなくそんな気が。 本気になるほど臆病になっていく。そんなんだったら萌え☆