7日目:珀黎翔編




『―――可愛い、面白い。』

 それが夕鈴に対する最初の印象。

 くるくる変わる表情と予想外の行動。
 今までにない経験が楽しくて、つい引き留めてしまった。

 君といると、どんな場所でも楽しいしどんな状況でも楽しめる。

 このままでいたいなと、何度願ったことだろう。


 でも君は本当に予想外で、なかなか思うようにいかない。

 我が儘いっぱい叶えてあげたいのに、全然言わないどころか頼ってもくれないし。
 言ってくれたと思ったら僕のためだったし。

『どうやったら、君と長く一緒にいられるかな?』

 そんなことをずっと考えている。

 でも君は"狼陛下"を怖がっているから。
 いつかは離れて行ってしまうんじゃないかって。

 僕はそれが怖いんだ。
 君が僕の前から消えること、それが1番怖くて。


 どこまで触れて良いのか、どこまでだったら許されるのか。
 時に失敗して怖がられて逃げられて、その度に臆病になっていく。

『嫌われたくない、怖がらないで。』

 受け入れてとは言えない。
 だからせめて嫌いにならないで。

 君が傍にいてくれるなら、それ以上望まないから。






「陛下、お帰りなさいませ。」
 これは"妃"の顔。
 それでも心を込めて僕を出迎えてくれる。

「お疲れ様です。」
 人払いをして一息つくと、今度は夕鈴自身の言葉で。
 そうしてそっと湯気の立つ器を手渡された。

「…この瞬間が1番ホッとするね。」
 ふと呟くと彼女が微笑む。

 そんな他愛もないことが嬉しいだなんて、君は知っているかな?


 今のこの生活を壊したくない。
 それには君がいないとダメなんだ。

 君がいるから僕は見失わずにいられる。
 君がいないと僕は光を見つけられなくなる。


 ―――だからここにいて、もう少しだけ。




2011.11.1. UP



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フィルター最大出力(笑)
この祭りの本命ともいえる陛下編でした。
最初は結構積極的だったんですが、最近は引いてる気がするんですよね…
言葉も態度も甘いんだけど、どことなくそんな気が。
本気になるほど臆病になっていく。そんなんだったら萌え☆



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