恋の悩み
    『高鳴る』 (song by 藤田麻衣子)




 壊れそう
 壊さないで

 気づかれたくないのに
 気づかれたらダメなのに

 壊れそうな心音が、貴方に聞こえてしまいそうで・・・



「あ、あああああの・・・っ」
「ん?」
 意を決して顔を上げる。

 きっと顔は真っ赤だと思うけれど。
 これは、私が慣れていないせいだと思っているはず。
 むしろそう思っててくれなければ困る。

「どうして私はここにいるんでしょう・・・!?」

 動けない。それを私は許されていない。
 そして陛下が近い。近すぎる。

 ―――こんな距離じゃ、私の心臓が壊れてしまう。

「どうして陛下の膝から降りてはいけないんですか!?」
 ここは四阿で、他にも座るところはいっぱいあるのに。
 どうして二人でこんなにくっついている必要があるの!?

「だって寒いから」
 にこにこ笑顔の陛下がさらっと返してくる。
 さらには腰に回した腕に力を込めて、ますます二人の距離は縮まった。

(いやいや意味がわかりませんから!)

「だったら部屋に入りましょうよ!」
「えー せっかくのいいお天気なのに。」
 他に誰もいないからと、陛下は小犬のまま不満を漏らす。

 なにその理不尽な不満! こっちの方が不満だらけなのに!

「思いきり矛盾してるじゃないですか!!」
 怒鳴ってみせても陛下はどこ吹く風。
 楽しそうに笑うだけで、解放してくれそうにない。

 何がそんなに楽しいのか分からないけれど。
 ・・・・・・ああ、私をからかうのが楽しいのか。って、ムカつく!


「離してください!」
「えー ヤダ」
「何ですかその駄々っ子みたいなセリフは!」

 陛下は狡い。自分ばっかり余裕いっぱい。 
 私はこの気持ちが陛下に伝わりはしないかと緊張しているのに。
 怒鳴って誤魔化して、貴方にバレないように必死なのに。

「ゆーりんと一緒にいたいだけだよ。」
「・・・っ」
 ぐっと引き寄せられて、気がつけば彼の腕の中。
 囁かれたときに吐息が耳に当たって肩がびくりと震えた。


 そんなの反則ですよ!
 耳元でそんなこと言われたら、誰だって・・・

 ・・・・・・違う。陛下だから。
 私が陛下を好きだから、こんなに動揺してしまう。



 どんどんどんどん惹かれていく。
 狼陛下の役に立ちたい、小犬な彼の側にいたい。
 自分の気持ちが早すぎて、ついていけなくなりそう。

 隠さなきゃいけないのに、バレたら側にいられなくなるのに。


 ねぇ、お願い。伝わらないで。
 貴方の側にいたいから。

 引き寄せられた貴方の腕の中で、この鼓動が聞こえませんように・・・




2015.3.12. UP



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↓当時のコメントより

藤田麻衣子さんの歌好きです☆
で、これは某乙女ゲー発アニメのOP曲です。
これは最初から夕鈴視点だなーと思って聞いてました。

なので、夕鈴視点のお話です。
うーん・・・視察よりは前くらいかなぁ?



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