嫌われ者の狼陛下。 狼陛下は誰にも愛されない。 恨まれてもいい。独りでいい。 それが狼陛下の役割だと知っているから。 それは自ら選んだ道だ。 国のために、民のために、全てを捨てた。 独りで生きていくと決めた。 ―――だから。 『大好きですよ!!』 そんなこと、言われるとは思っていなかったんだ。 「―――なんだ」 とりあえず持ってみただけの書類は一度も目を通さずに再び机上に戻される。 「あれは―――」 徐々に熱くなる我が身を誤魔化すように口元を押さえた。 あれは一体何だったんだ。 あんな可愛い顔をして、あんな風に言われたら、勘違いしてしまう。 彼女は彼女の居場所へ帰さなければならないのに。 彼女が生きる世界はここではないのに。 ついこの手を伸ばしてしまいそうになる。 「ダメだ・・・」 ここは彼女に相応しくない。 あの娘は、欲しいからと手に入れていいものじゃない。 思えば、僕と君は背中合わせのような世界を生きてきた。 暗い闇の中で生きてきた僕と、あたたかい陽だまりの中で生きてきた君。 疑うことから始める僕と、信じることから始める君。 心美しい君 真っ白な君 裏切られても報われなくても、「受け入れること」を選べる君 そんな君の側にいれば、僕も変わる気がした。 君の側にいれば、この色あせた世界が鮮やかになると思えた。 手放したくない。離れたくない。君の側にいたい。 そんな、叶わない夢を見てしまうほど。 ―――もう限界なのかもしれない。 これ以上側にいたら、僕は君を手放せなくなってしまう。 だからその前に君を自由にしなければ・・・ 2015.3.13. UP --------------------------------------------------------------------- ↓当時のコメントより 狼陛下のタイトルには横文字使わないのがこだわりなんですけど。 これは曲名なので仕方ないですよね。 福山雅治氏の歌です。この歌大好きなんですよ。 で、聞いてたら陛下から夕鈴への歌にしか聞こえなくなって。 そんなこんなで陛下視点です。ただつらつらと語ってます。 11巻辺りの話っぽいですね。←他人事か