あなたへの想い
    『恋に落ちて』 (song by 藤田麻衣子)




 狼陛下は怖くて、小犬な陛下は我が儘で。
 人に秘密ばっかりで、いっつも人を巻き込んで。

 でも、どうしてか好きになってしまった。
 あの人の役に立ちたい、力になりたいと思ってしまったから。


「・・・今夜も、無理かしら・・・・・・」
 窓の向こうをぼんやり眺めながら、今宵も訪れないあの人を待つ。
 最近仕事が忙しいと言っていたから来ないのは当然なのだけど。

 最後に会った日に、「会えないのは寂しいな」って狼陛下が囁いた。
 その前の晩に、「早くゆーりんのお茶が飲みたいよ」って小犬がしょぼんとして言っていた。

 そんな貴方に「私もですよ」って言いたかった。
 でも、それはプロ妃の言葉じゃなかったから飲み込んだ。

 ただ側にいられるだけで幸せなの。
 二人でお茶を飲んでのんびり笑ったり、庭を散歩して「あれ綺麗ですね」って眺めたり、
 それだけでいい。それだけで幸せだから。


「―――お妃様、」
 そっと声をかけられる。
 私がビックリしないように、絶妙のタイミングなのはさすがだと思う。
「陛下のお戻りでございます」
 逸る気持ちを抑えつつ振り返ったところで、期待していた言葉をにこやかに告げられた。

「お帰りなさいませ 陛下!」
 とびきりの笑顔で貴方を出迎えると、優しく受け止めてくれる。
 貴方に会えて嬉しい。この気持ちは演技じゃない。

 この恋は隠さなきゃいけないけれど、妃としてなら嬉しいって伝えても良いでしょう?


 知れば知るほど貴方を好きになっていく。
 離れていても貴方のことばかり思い出してしまうほど。

 偶然手が触れた時、ぎゅっと繋がれた手。
 私の前でだけ、少し和らぐ顔。
 思い出すだけで胸がぎゅっとなる。

 貴方の側にいたい。
 貴方の味方でいたい。

 自分は独りだという貴方の側にいたいの。
 貴方の花嫁は貴方の味方ですよって言いたいの。

 貴方の側にいるためにこの恋はバレちゃダメだけど。
 でも陛下、貴方は独りじゃないですよって、それだけは知っていて―――




2015.3.13. UP



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↓当時のコメントより

夕鈴視点は今日も藤田麻衣子さんです。
実はこれ、最初は陛下視点でもいいかなーって思ってたんですよね。
でもやっぱり夕鈴かなと思い直したわけです。

では、恋する夕鈴視点です。
10巻に入っていた特別編ネタを含みます〜



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