別離
    『運命の人』 (song by 藤田麻衣子)




 そっと窓を開けると、冷たい風が頬を撫でていく。
 小さく息を吐くと空気が白く色づいた。

「きれい・・・」
 見上げた先には大きな満月。
 それはいつかあの人と眺めたときと同じように輝いていて。・・・無性に泣きたくなった。
 冷え冷えとした青白い色にあの人を想う。

(貴方も今、同じ空を見ていますか?)


 あの人に一方的な別れを告げられて・・・下町に帰ってきて、どれくらい経っただろう。
 毎日バイトに家事にと忙しく過ごして、以前と変わらないような日々を繰り返して。
 時々あの人の側にいたのは本当に夢なんじゃないかって・・・思ってしまう時もあって。

 でも、夢なんかじゃない。 
 あの人を想うと痛む胸も、泣きそうになるのも。
 この気持ちは本物で夢なんかじゃない。

 私は貴方の側にいたかった。
 貴方ほど好きになれた人はいなかった。

 ―――貴方はそれを許してはくれなかったけれど。

「陛下・・・」
 勝手に別れを決められても怒れないほど、寂しげだった貴方。

 あの広い王宮で貴方は今も独りですか?
 冷たく寂しいあの場所で、貴方は寂しくないですか?

「私は、寂しいです・・・」
 あの時は告げられなかった。
 言っても何も変わらなかったかもしれないけれど。
 言えば良かったと今でも思う。


「貴方に会いたい、です・・・」

 ポツリと呟いた言葉は、誰にも聞かれることなく白い息と一緒に闇に溶けていった。




2015.3.14. UP



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↓当時のコメントより

またも夕鈴視点が藤田麻衣子さんですみません。
明日だけは違いますので!(代わりに陛下視点が藤田さんですけどね!)
実は藤田さんの歌でこの歌が一番好きです。
車の中でリピートしては熱唱するほど好きです。←

これは陛下視点でも夕鈴視点でもいける歌かなぁって思います。

では、離婚編の夕鈴視点です。



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