「まるで雪みたいですね」 ヒラヒラと舞い落ちる桃色の花びらを見上げて彼女が笑う。 「そうだね」 走り出してしまいそうな彼女の手を握って引き寄せると、彼女はギュッと握り返してくれた。 ・・・それがどれだけ嬉しいことか、君はきっと知らないんだろうね。 風が吹く度に花びらが舞い散る。 確かに雪のようだと思った。 ―――雪と聞いて思い出すのは、母が眠る北の大地。 まだあちらは寒いのだろうか。 けれど思い出しても辛くはない。 隣に君がいてくれるから。 独りじゃないと、君が言ってくれるから。 「散る前に夕鈴と見れて良かった。」 真っ直ぐに伸びる道に桜並木が続く。 青い空を彩るように散り、地面にも絨毯のように敷き詰められ、花は視界を桃色に染める。 「私も、陛下と見に来ることができて良かったです。」 こちらを見上げてはにかむ君が可愛くて、自然と僕の顔にも笑顔が浮かぶ。 こんなに幸せな気持ちで日々を過ごせるなんて、君と出会う前の僕なら信じられなかった。 「明後日には雨で散ってしまうらしい。」 「・・・それは残念です。」 せっかく綺麗なのにと、夕鈴は本当に残念そうな顔をする。 愛しい妃のためにならどうにかしてやりたいが、桜の木にはところどころ青い葉も見えている。 諦めるしかなかった。 しかし、可愛い妻の憂いを取り除くこともまた、夫としての使命。 なんと言ってあげれば良いかとしばし考えて――― そっと繋いだ手に力を込めた。 「―――また、来年見に来ればいいよ。」 「っ」 弾かれたようにこちらを見上げる彼女に微笑む。 「来年もその先も、毎年見に来よう?」 その言葉は未来への約束。 君だけを愛し続けようという、君への決意だ。 君が僕のたったひとりの人。 やっと見つけたんだ。 隣にいて欲しいのは君だけだよ。 君も同じ気持ちならいい。 季節が変わっても 側にいて。 また来年も、雪のように舞い落ちる桜を見に来よう。 2015.3.15. UP --------------------------------------------------------------------- ↓当時のコメントより 結局4日間とも藤田さんの歌が入ってましたね(笑) ソナポケの「あなたのうた」も陛下視点としてはいいかなって思いつつ。 他にも候補はあったんですけど、期間と自分の限界的に8曲に絞りましたー ちょっと先の未来の陛下視点ということで。 両思いになって幸せいっぱいのイメージです。