未来の二人
    『ふたりで・・・』 (song by 倖田來未)




「綺麗ですね〜」
「そうだね。」
 四阿で二人仲良く寄り添って寛ぐ。
 彼の肩にコテンと頭を傾けると小さく笑われた。

 卓の上には湯気立つ花茶と可愛らしくて甘いお菓子。
 風に舞うのは雪ではなく、春の訪れを告げる桃色の花びらだ。

 何気ない日常がこんなに幸せだなんて、昔は分からなかった。
 離れたことがあるからこそ、貴方と過ごせるこの時間を大切にしたいと思う。

 穏やかな日々、幸せな日々
 ―――貴方と迎える春はこれで何度目だったかしら。


「・・・こんなにのんびりしていて良いんですか?」
 まだ日は高く、いつもなら午後の政務が始まる時間だ。
 そろそろ李順さんが迎えに来るんじゃないかと思って聞くと、大丈夫だと返された。
「昨日でひと段落着いたんだ。だから、今日は午後からお休み。」
 そう言って陛下は子どもみたいに笑う。
「それはお疲れ様でした。」
 顔を上げて微笑み返して、子どもにするみたいに彼の頭を撫でる。
 陛下はちょっと照れたようにはにかんで、それが可愛いなって思ったのはナイショ。

「―――ねえ、夕鈴。」
 ふと彼が風を追って空を見上げる。
 遠い遠いどこかを見つめて、少しだけ切ない横顔に胸がぎゅっとなる。
「君は、ここにいて良かった?」
 時々確かめるように、陛下は同じことを尋ねる。
 私は自分でここを選んだのに、後悔していなかって不安そうに聞くのだ。

(ああもう 本当にこの人は・・・)

 その問いの答えとして、まず彼の大きな手をギュッと握る。
 驚いたようにこちらを見てくる彼ににっこりと微笑んでみせた。

「私は何があったって、いつだって貴方の味方ですからね。」

 貴方が不安に思うなら何度だって言ってあげる。
 私は貴方を独りにしない。寂しがらせたりしない。
 狼陛下のたった一人の妃は、何があっても貴方の側にいるって決めたのよ。

「ゆーりん・・・」
 伸びてきた逞しい腕が私の肩を抱き寄せて、私の身体は彼の胸の中へと引き寄せられる。
 貴方の香りに包まれて、私はまた幸せを噛みしめる。

「愛してる。」

「私も大好きですよ。」


 まだ貴方の全てを知ったわけじゃないけれど。
 全てを分かってあげられる、なんてそんなことできないけれど。
 私が持つ全てで、できること全てで、貴方を支えていきたいと思う。


 だいじょうぶ、
 二人でいられたら、きっとどんなことでも乗り越えていけるわ。




2015.3.15. UP



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↓当時のコメントより

夕鈴視点の最後は倖田來未ちゃんです。
この曲が好きだというのもあるんですけど、フレーズに夕鈴っぽい部分がちょいちょいあってですね。
AZUの『Ring 〜M&M〜』も捨てがたかったんですけどー(>_<)

ということで、夕鈴視点でどうぞ☆


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