※拍手からの再録です。 1/2に新作5種と差し替えたのでこちらに移動しました。 ********************************************************************************* -J浩大登場編- 「へぇ。ホントに雇ったんだ〜」 「―――誰だ。」 夕鈴を背に庇って黎翔は侵入者との間に立つ。 「おっ ちゃんと護衛っぽいね。合格合格。」 「浩大!」 「…知り合い?」 「私の隠密なの。」 「与えられた任を終えて、戻ってきました〜」 「預かってきたよー」 ひらひらと手紙をかざして見せる。 「え、まさかそれ青慎からの手紙!?」 「アッタリー」 途端に夕鈴はちょうだいと手を伸ばし、ひったくる勢いで浩大から奪う。 「これがあるから頑張ろうって思えるのよね−v」 手紙にキスしてはしゃぐ。 「青慎?」 誰だと黎翔は怪訝な顔。 こんなに楽しそうな夕鈴は見たことがないとモヤモヤする。 「あれ知らない? 陛下にとっては(家族みたいに)大切な人だよ。」 黎翔の眉がぴくりと反応する。それを見て浩大はニヤニヤ。 二人きりになった後。 手紙を熱心に読む夕鈴を攫って奥の部屋へ。 「陛下―――…夕鈴。青慎って誰?」 「れ、」 寝台に押し倒されている格好に夕鈴は戸惑う。 「僕は彼の代わり?」 「? 貴方と青慎は全く似ていないわよ?」 「彼のこと、大切?」 「それはもちろんよ。」 「僕よりも?」 「黎翔? さっきから何を言ってるの?」 「他の誰かに渡すくらいなら、このまま私のものに―――」 「はい、そこまでー」 浩大が静止に入った。 「なぜ止める? 煽ったのはそっちだろう。」 「うん、反省してマス。」 「青慎は北の辺境にいた頃の知り合いよ。とっても頭が良い子で、李順が自ら知識を教え込んだの。」 愛弟子ともいえる。 「真面目でいい子でとっても可愛くて。弟みたいに思ってた。」 ・・・・+・・・・ 黎翔さん、目の前の浩大ではなく青慎に妬くの巻。 だからっていきなり押し倒すのはどうかと思うのー 不敬罪で切られるヨ。 ********************************************************************************* -K青慎登場編- その日、手紙を受け取ってからの夕鈴の機嫌はすこぶる良かった。 「何をそんなに嬉しそうにしてるの?」 「青慎が王都に来るのよ! 登用試験の勉強のためにこっちで暮らすんですって!」 黎翔はちょっとジェラシー 「来ないわ… どうしちゃったのかしら……」 下町で待ち合わせ。約束の時間になっても青慎が来ない。 「馬車が遅れてるとか」 「よぉ 黎翔。帰ってたのかよ。」 「几鍔。―――その子は?」 「道に迷ってたから連れてきたんだよ。」 「! 青慎!!」 「へ…姉さんッ」 「え……」 ひっしと抱き合う。 「確か李鈴だったか。姉弟なのか?」 「ああ、違うの。地方にいた頃に知り合った子よ。私は本当の弟みたいに思ってたけど。」 まだ子どもだった。 黎翔は安心する。 「もっと分かりやすい場所が良かったわね。ごめんね。」 「ううん。王都は広すぎるから。でも良いところだね、ここ。みんな優しかった。」 「この辺りは比較的治安が良いのよ。」 「よかったねー、几鍔。褒められてるよ。」 「結局どこに住むの?」 「葉さんっていう、父さんの知り合いのところに下宿させてもらうことになってるんだけど…」 「葉? 金物屋か?」 「はい。知ってますか?」 「知ってるというか… 三日前に一家夜逃げした家だ。」 「え!?」 「住み込みで働くしかないかな…」 「李順の家に行けばいいじゃない。愛弟子なんだし。」 「そんなの畏れ多すぎるよ…」 「―――ねえ、青慎君。自炊できる?」 「え? あ、はい。一通りは……」 「じゃあさ、僕の家に住まない?」 「黎翔?」 「一応貴族だけど、貧乏だから屋敷はこの近くにあるし。しかも無人だから気を使わなくて良いよ。」 「無人、ですか?」 「僕は王宮勤めで家にほとんど帰らないんだ。管理は几鍔に任せてるくらい。」 「でも、いくら見てもらってるからといっても、やっぱり人がいないと家って傷むんだ。」 「良いんですか?」 「君の人柄については彼女が保証しているし。君が良ければ、の話だけど。」 「僕はありがたいです…」 「そうね。私もそれが安心だわ。」 「だから、この家のことをよろしくね。宿代はそれでいいよ。」 「困ったことがあったら几鍔に聞けばいいから。」 ・・・・+・・・・ どこまでも青慎ラブな夕鈴。子どもだからって安心しちゃダメだと思うよ黎翔さん。 この二人、血は繋がってないから。子どもの成長は早いしー(笑) もうちょっとひと悶着あってから黎翔さんちに住むのも良いかなーとか。 これは最短の場合のネタです。 青慎が姉さんと呼ぶのは、そう呼ぶように夕鈴が言ったからです。 王宮に入ったら言わないでしょうけど。 ********************************************************************************* -L紅珠編- 「…氾紅珠、ですか?」 「ええ、私の茶飲み友達なんだけど。貴方に会ってみたいんですって。」 「断れなかったのですか?」 「……あの子、見た目に反して押しが強いのよねぇ。」 「陛下はあの方に甘いのですよ。」 「だって可愛いんだもの! 上目遣いで瞳うるうるさせて「ダメですか?」なんて言われて断れるわけないじゃない!」 拳を握って力説する。 「あれで断れる男がいたら見てみたいわ!」 「…貴女は女性ですけどね。」 「煩いわ、李順。あの可愛さは国の宝よ。」 言って黎翔の方に向き直る。 「とにかく、会ってもらうから。」 「はい。それが陛下のお望みならば。」 「まあ一応氾家の方ですから、当たり障りない会話で乗り切ってください。」 で、紅珠は彼の格好良さに見惚れる、と。 んで欲しいなぁって思っちゃって。 「あの方を私の物にできれば、陛下はまた周りに目を向けるでしょうか。」 紅珠は自分の兄を陛下の夫にして、彼女と義姉妹になるのが夢だった。 陛下に夫ができてしまったと知って諦めかけていたのだが。 「そうすれば、水月兄さまにもまたチャンスが巡ってくるかもしれませんわ。」 瞳がキラキラと輝く。 「まあ! なんて名案なのかしら!!」 また王宮に遊びに来ている紅珠。たまたま夕鈴ではなく黎翔に先に会う。 段差に躓いて、黎翔が受け止める。(さりげなく色仕掛け的なことするかも?) そしてそれを夕鈴に見られた。 「ち、違うのですわ! 私が転びそうになって、それで」 「まあ。何をそんなに焦る必要があるの?」 夕鈴はにこりと笑う。 「そうでしょう? 黎翔。何か弁解することが?」 「いえ、ありません。」 夕鈴の前に跪く。 「私のこの身は髪一筋に至るまで陛下のもの。弁解などしなくとも陛下はご存知のことだと思いますので。」 一度赤くなって、慌てて冷静を装う。 「……そうね、貴方のその無駄な色気は紅珠のような純粋な娘には刺激が強すぎたわね。」 こほんと咳払いして、顔を上げて紅珠を見た。 「紅珠、私に免じて許してね。この狼は私がちゃんと躾ておくから。」 「いえっ 私が不注意だっただけですわ。ですからその方には何も…」 「紅珠は優しい子ね。分かったわ、黎翔には何もしないから。」 「迂闊だった。まさかあんな手でくるなんて…」 「紅珠はいい子よ?」 「…李順殿の言う通り、貴女は彼女に甘い。」 「なっ」 「私は陛下のものです。それをお忘れなきようにお願いします。」 「分かってるわよ! だから、狼モードで迫らないで!!」 警戒して避ける黎翔。 それを紅珠は知っていながら二人きりになる。 「…わざわざ陛下と私を引き離して、何か話したいことでもあるのか?」 「―――貴方はこのままでよろしいのですか?」 手を伸ばす紅珠、それを避ける黎翔。 「大貴族の水月兄さまならともかく、貴方は下級貴族。身分が上がることはありませんし、体のいい飼い殺しですわ。」 「けれど、私なら」 「そして私は貴女に逆らえずに生きていくわけか。―――冗談じゃない。」 「紅珠」 黎翔の拒絶の言葉と夕鈴が紅珠を呼ぶ声が重なる。 「陛下!」 「"それ"は私のモノよ。たとえ貴女でもそれだけは譲れないわ。」 「陛下は、この方をそれほどまでに大切に思われているのですか?」 「…そうね。そうでなければこんな我が儘通さないわ。」 「分かりました。それほどまでに強い愛で結ばれたお二人に、私では敵いませんわ。」 「嬉しかったなー」 「それだけは譲れない、だって!」 「わーすーれーて―――!」 恥ずかしい!! ・・・・+・・・・ 夕鈴は可愛いものが大好きなのですかね(笑) せっかくの紅珠編なのでもう少し遊んでもいいかなー ********************************************************************************* -M温泉離宮編- 「今まで行きたがらなかったのに、突然どうされました?」 「疲れただけよ。たまには良いでしょう?」 本当は黎翔の休養のために計画した。 知っているのは老師と夕鈴だけ。 馬車に揺られて離宮へ到着。 「陛下、どちらへ?」 「王宮から持ってきた書類の確認をしてくる。」 「では、私も一緒に」 「貴方は何もしなくて良いわ。」 「え?」 「ここは安全よ。だから安心してゆっくりしてて。」 イケメンに離宮は色めき立つ。 過剰な接待に黎翔は辟易。 「あれは一体何だ? 煩わしいことこの上ない。」 陛下が仕事をしてらっしゃるのに、自分だけ休むわけにはいかない。 「久方ぶりの客に張り切っているのでしょう。」 李順も呆れたため息。 「基本的にこの離宮は前王…つまり、男性を喜ばせるために作られています。」 女王陛下には向きませんね、と。 それを聞いて黎翔はますます意味がわからなくなる。 「じゃあ、どうして…」 「温泉が好きだからではないですか。あの方の考えることは比較的単純です。」 「暇そうだな。」 方淵に睨まれる。 「陛下は政務に追われておられるというのにいい身分だ。」 「その陛下に暇を出されたのだから仕方ない。」 「貴様がどうなろうと構わないが、陛下を傷つけるようなことがあれば容赦はしない。」 「君に言われなくてもそんな気は一切ない。」 「そうか?離宮の女どもに散々言い寄られているようだが?」 「あれは勝手に寄ってくるだけだ。」 「それが陛下の心労にならなければ良いが。」 「…何?」 「自分の夫が他の女に言い寄られていれば、いくら陛下でも良い気はしないだろう。」 「……」 温泉でばったりしてみたり。 女官に呼び出されて行ってみたら、偶然夕鈴が入っていた。 「誰――― え?」 「陛、下……?」 「〜〜〜〜〜〜!!?」 自分の姿に気がついて首まで浸かって身を隠す。 「み、見た!?」 「いえ… 湯気であまり……」 「あっち向いてて! き、着替え置いたら向こうにいて!」 〜着替えタイム〜 「何故こちらに?」 「国王専用の湯殿って、広いし人が多くて落ち着かないのよ。」 「黎翔はどうしてここに?」 「陛下が呼んでおられると、女官に言われて、」 「私は呼んでないわ。」 「…そうでしょうね。おそらく、私を呼び出すための口実でしょう。似たようなことが何度もありました。」 「ああ、ものすごくモテてたものね。」 「視線がうっとおしいです。」 「ゼイタクね。みんな美人じゃない。」 「―――私は誰のものですか?」 「ちょ、近」 「私は貴女の夫です。貴女以外に興味はありません。」 「でも、偽物…」 「偽物でも臨時でも、今の私は陛下の物です。」 「わ、分かったから離れて!!」 「陛下は温泉がお好きなのですか?」 「嫌いじゃないけど、好きってほどでもないわね。」 「では、何故温泉に行こうと思われたのですか?」 「それは貴方のた―――っっ!」 「私、の?」 ガタン 「陛下、お迎えにあがりました。ついでに、外に女官がわらわらいたので追い返しましたが…」 「…あ」 「こんな所で何をしてるんですかねぇ? 黎翔殿」 「不慮の事態です。」 「少し話をしてただけよ。」 「外の女官達は黎翔への告白待ち。放っておきなさい。」 「さて、最後の仕上げです。」 「頼むわよ、李順。」 「お任せ下さい。―――今の王はどなたなのか、理解していただきましょう。」 黎翔もそれなりの格好に着替え。 「陛下に釣り合う格好でなければなりませんからね。」 「ほんと、ムカつくほどにイイ男だわ。」 出てきた夕鈴に黎翔は言葉をなくす。 「何?」 「ああ、いえ… あまりの美しさに見惚れていました。」 「ッッ!?」 夕鈴真っ赤。それを呆れて見ている李順。 「仲良し演技は今はいいです。宴の席で存分になさってください。」 黎翔と共に会場に入る。 ばっちり着飾った夕鈴に全員釘付け。 仲良しぶりを見せつける。女官達も敵わないと諦める。 ・・・・+・・・・ 温泉でバッタリは王道ですねww 実際書くならかなり長くなりそうですねー ********************************************************************************* -N春の宴・準備編- 「ほんっとめんどくさいわ……」 呟いて、自室の机に突っ伏す。 行儀が悪いと李順が小言を言うが無視。 「どうかしたの?」 黎翔は王宮の奥まではついて行けない。 だから知らないこともわりと多い。 「春の宴の総指揮を任せて欲しいと名乗り出た人物が二人いまして、少しもめているのです。」 「それが、柳大臣と氾大臣なのよね…」 「ああ、それは決めづらいね…」 どちらも王宮内の重要人物。つまり、どちらを選んでも角が立つ。 「かといって、二人以外を選べばその人が標的になってしまうし。」 柳家と氾家を差し置いて動ける者などそうそういない。 「あの二人を押さえつけられるのなんて周宰相くらいよねー…」 めんどくさいと彼に頼んだこともある。 けれど、そこで帰ってきた返答が、 『陛下がお望みならば私は構いませんが……その間の執務に多少の影響が出るかと予想されます。』 それは嫌だと夕鈴が言って、その案は即時却下された。 「あーもーめんどくさい! 宴の責任者くらい誰でも良いわよッ!」 「いっそ二人でやらせれば?」 「たかが宴に国の重鎮二人も使うほど、うちは暇じゃないのよ。」 黎翔の案も却下された。 政務室で仕事をこなしていた夕鈴。 たまたま近くにいた水月に声をかける。 「ねえ、水月。貴方が春の宴に求めるものは何?」 「そうですね… 華やかさでしょうか。陛下の偉大さを表現するために大楽団や舞踏団を準備し、」 「馬鹿者! 公的行事は粛々と行われるべきだ。重要なのは確実な進行と安全性の確保だろう!」 ここで方淵と水月が口論を始める。 それを見ていた夕鈴は、一つため息をついて… 「―――分かったわ。」 手にした扇を閉じ、二人の前にかざす。 「柳方淵、氾水月。貴方達二人を責任者に命じます。」 「「!!?」」 「二人で力を合わせて、私の為の宴を見事に成功させてみせなさい。」 「陛下の、為…」 「できないとは言わせないわよ?」 「「はっ」」 女王は過去に例がないので、花を届けるのはどうしようかという話に。 「"花"というなら、それは当然陛下のことでしょう。」 「しかし、王は春を待つ役だ。」 「ならばやはり彼を?」 二人の視線が黎翔へ。(関係者だからという理由で二人の間に放り込まれたw) 「女性だからあの距離を花駕籠で運べるんだぞ。こんな大男を運べるか。」 「……私が歩けば良いのでは?」 「成程。」 「それは考えていませんでしたね。」 妃があの距離を歩くのは大変だろうが、武人である黎翔ならば特に問題もない。 「華やかさには欠けるかなぁ…」 「そこは演出で何とかしろ。」 「…もう少し華が欲しいよ。」 「文句があるなら責任者を降りろ。」 「それは遠慮するよ。陛下自ら私に頼まれたのだから、応えたいのは当然だろう?」 ここでまた口論開始。 「方淵殿も水月殿も、本当に陛下のことを大切にされてますね。」 止める気もなく、何気なく呟いた言葉に二人が反応。口論を止める。 「当然だ。陛下は素晴らしい方、我が命を捧げた主君だ。」 「政務から遠ざかっていた私を戻してくださったのは陛下ですから。」 「珀黎翔。貴様も陛下の御代のために力を尽くせ。」 「はい。」 経倬が方淵に絡んでいる。 「陛下も何故お前達のような不適合者を選ばれたのか。」 方淵は一言も言い返さない。 「私ならばもっと」 「煩いわ。」 「陛下!」 「私ができると見込んだのよ。それとも、私の目を疑うつもりかしら?」 「いえ! 滅相もございません!!」 失礼しましたと青い顔で逃げる。 「…小物ね。」 「小物にございます。」 ・・・・+・・・・ 宴はどんな感じにしようかなー?(何も考えてない) そういえば、水月さん登場編を書いてないわ… ********************************************************************************* 2018.1.2. UP --------------------------------------------------------------------- 入れ替えしましたので、こちらに移しました。 ネタだけ増えてなかなか書き上がらない…