※ 日記に書いた小ネタを再録してみました。 「水月兄様から聞きましたわ。大変な目に遭われたそうですわね。」 あの子猫騒動から数日後、遊びに来た紅珠から労わるようにその話題を持ち出された。 …それでなくても、今日はいずれその話題になっただろうけれど。 だってその原因となったものが、今この場にいるのだから。 「この子がその子猫ですの?」 「ええ。すっかり懐かれてしまって離れないの。」 白い子猫は夕鈴の膝の上が定位置で、湯殿も寝るのも一緒というくらいベッタリだ。 一人ぼっちだった子猫は温かい場所を手に入れて、安心しきった様子で日々を過ごしてい る。 食事も十分、ブラッシングもたっぷり。 おかげで毛並みはツヤツヤ、やせ細っていた体も丸くなって健康的になった。 「可愛い子猫ちゃんですわね。」 紅珠も隣に座って白い毛並みを撫でる。 子猫は抵抗することもなく、気持ちよさそうにそれを受けていた。 「…けれど残念ですわ。私がそこに居合わせたら、そのまま連れて帰りましたのに。」 (ん?そのまま?) 言葉に引っ掛かりを覚えて内心首を傾げる。 「…猫じゃなくて?」 「ええ、お妃様ごと。」 にっこりと笑顔で無邪気とさえいえる顔で彼女はそう言ってのけた。 しかも冗談ではなく本気らしい。 「……」 やっぱり貴族って分からない… 紅珠は良い子だけれど、価値観の違いという溝は埋まりそうにないなと夕鈴はその時思っ た。 2011.12.19. UP --------------------------------------------------------------------- 舞台が後宮だったら最終的に陛下vs紅珠になってたのかな? 紅珠は夕鈴を再び私邸に連れて行く機会を狙っていると思われる(笑)