傷痕 -小ネタ-





※ 日記に書いた小ネタを再録してみました。




 リズム良く髪に触れる手のひら。
 細い指先が髪に差し入れられて、優しく梳いていく。

 それが心地良くて、目覚めてはまた眠りに落ちる。それを繰り返していた。




「足、痺れてない?」
「大丈夫よ。」


(足…? 何の話?)


「…よく眠ってるね。」
「本当ね。それだけ眠れていなかったってことかしら。」


(夕鈴は誰と話しているんだろう…)


 僕以外の誰かと… それはちょっと面白くない。


 ―――夕鈴は、僕の、だよ。







「――――…」
 ゆっくり目を開けると、彼女の笑顔が降ってきた。
「お目覚めですか?」
「夕、鈴…」
「はい。おはようございます。」
 その笑顔が眩しくて、思わず目を細める。

 眠る前と変わらない光景。…光の位置が少し違うくらい。

「…どれくらい眠ってた?」
 微睡みの中で彼女の声を聞いていたけれど、時間の感覚ははっきりしない。
 指折り数えて彼女はまた見下ろしてきた。
「もうすぐお昼ですから、三刻程でしょうか。まだ眠いのでしたら、無理されずに眠られ
 ても構いませんよ。」

 …いや、それはさすがに寝すぎだと思う。


「ごめん、退屈じゃなかった?」
「大丈夫です。時々浩大が相手をしてくれていたので。」

 さっきの話し相手は浩大だったらしい。
 自分が寝ている間… 人が知らない間に?

「…2人で?」
 声が少し低くなる。
 彼女はそれに気づかない。
「え、それはまぁ、他にはいませんから。」
「……ふぅん。」
 呟いて、視線を向けたのは彼女の後ろの木の上。

「お妃ちゃん。それ以上言うとオレの命に関わるから。」
 声が木の上から降ってきた。

「へ?」
 意味が分からないのは夕鈴だけ。




2012.1.27. UP



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感想の中からネタをいただきました☆
ヤキモチ陛下〜



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