ヤキモチくらいやきますよ。
今までは、あんまり気にしなかったんだけど…
陛下はあまり人を周りに置かない。
後宮の陛下の部屋に行っても李順さん以外の人に会ったことはほとんどない。
…でも、たまに姿は見ることがあって。
夕鈴が陛下の部屋を訪れた時、ちょうど部屋付の女官に出会した。
彼女達は夕鈴に気づくと深く礼をしてから下がっていく。
それを何とはなしに見送っていると、奥から部屋着に着替えた陛下が出てきた。
「夕鈴? どうしたんだ?」
声をかけられて隣に並んだ彼を見上げる。
「…後宮の女の人って美人な方ばかりですよね。」
よく考えたら夕鈴のところにいる女性達も可愛かったり美人だったり。
離宮も綺麗な人がいっぱいいたけれど、こっちだって負けてない。
「……陛下は何とも思わないんですか?」
こんな美人に囲まれて、1人くらい良いなとか思ったりしないのかなとか。
「―――妃以外は似たものだと前にも言わなかったか?」
「今 演技は良いです。」
いつもの調子で頬へ伸ばされた手を退ける。
演技されても今は誰もいないし、演技している陛下に聞きたいわけじゃないし。
「うわ、ばっさりー…」
「? 陛下?」
何落ち込んでんですか?と声をかけてみたけれど、何でもないと肩を落として言われただ
けだった。
こういうときの陛下はたまによく分からない。
「私はただ、陛下の周りは美人ばっかりだなって思って…」
「夕鈴、ヤキモチ?」
「違います!」
(てゆーか、どうしてそんな嬉しそうなの!?)
からかうのがそんなに好きなのかこの人はっ
人の気も知らないでっ!
「即答かー…」
何故だか陛下はまた凹んでいる。
今まで人をからかおうとしていたくせに意味が分からない。
「―――でも、それなら私も妬いている。」
「へ?」
不意に狼陛下が夕鈴の腕を捕らえる。
そして引かれると彼の腕の中に身体が転がり込んだ。
「君の周りには男が多すぎるからな。」
「…!?」
(な、何言ってるの!?)
身に覚えがないことに混乱する。
言っては何だが生まれてこの方17年、色恋にはとんと縁がなくて嫁き遅れと言われてい
るのに。
(てゆーか、なんでまた狼陛下に…!?)
「君には私だけを見て欲し」
「っやっぱり何かあるんですね!?」
今ので確信した。
「え?」
素に戻ってきょとんとする陛下の腕の中から抜け出す。
「狼陛下で誤魔化そうとするなんて… 陛下の馬鹿!!」
「え、ちょ、夕鈴!?」
陛下の制止は完全無視で、彼の部屋を飛び出した。
(やっぱり美人が良いんじゃない!)
早く話を終わらせたくて狼陛下を使うなんてサイテーだ。
…なぁんて、誰に手を出そうが陛下の自由だし、私が怒る資格なんてないのも分かってる
けど。
(あーもー ヤキモチよっ 悪かったわね!!)
最終的には開き直った。
恋する乙女心は複雑なのだ。
まさか自分がこんな体験することになるなんて思いもしなかったけど。
その後は、このモヤモヤイライラが収まるまでは会えないと、追いかけてきた陛下を一晩
閉め出した。
ちなみに翌日早朝に、全力で謝られたことは言うまでもない。
2011.10.5. UP
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陛下3段落とし☆(鬼)
意外に悩んで、前のネタを総没にしました。
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