1.起床



 私共の最初の仕事は、お妃様のお目覚めのお手伝いです。
 お妃様の一日が滞りなく、お妃様が心地よく過ごされるために心を砕くのが私共の務め。

 ですが、お妃様の場合は―――





「おはようございます、お妃様。」
「おはようございます。」

 お妃様は起きられるのが早いので、起床のお時間にはもうお目覚めになっておられるので
 す。
 それどころかどう見ても、私共が来るまで待っておられるようで。


(ああ、今日もダメでしたのね…)
 しっかりと目覚めたお顔で寝台から降りられるお妃様を目で追う。
 これから鏡台で身支度を整えられるのだ。


 密かに残念に思っております。
 私は未だ一度もお妃様の寝顔を拝見できておりません。
 寝顔も可愛らしいと陛下が仰るお顔を… 残念ですわ。

 陛下だけの特権ということなのでしょうか。
 羨ましいですわ。




 お手水で顔をお洗いになられた後、鏡台に座られたお妃様の御髪を整えるのは私の仕事。
 ようやく私の出番ですわね。

 お妃様の御髪は柔らかくて、櫛で梳くとさらさらと流れるのですわ。
 だからこうして触れるのは好きですの。


 上の方で2つのおだんごを作り、最近お気に召しておられる蝶の髪飾りで留める。
 耳の上に飾る花飾りは、後宮でお過ごしになるときは小さめのもの、来客や王宮に出向か
 れるときは大きいものを。

 本日は午前中は後宮にいらっしゃいますから小さめの花ですわね。



「―――お妃様。」

 そういえば、お伝えせねばならないことがあったのです。

「はい?」
 鏡越しに目線を上げられたお妃様と目が合う。
 鏡の中の自分がにっこり笑った。

「今朝は、陛下もご一緒されるそうですわ。」
「へ!?」





<夕鈴、心の叫び>

(早く起きてないと、寝呆けたままじゃお妃演技できないのよねー…)
 伊達に主婦業やってなかったから早起きは得意だけど。

(ってゆーか、朝っぱらから何言い出してんのよ あの人は―――!?)




2011.11.11. UP



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まあこんな感じです。
お妃様大好きな侍女の視点で一日を追ってみます。

ついでに夕鈴の声もオマケで入れてみました☆



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