6.就寝
湯上がりのお妃様の御髪を整え、花の香を焚く。
もうすぐ陛下がお渡りになられる時間。
お妃様は簡単で良いと仰るけれど、これからの時間のことを考えるとつい念入りになって
しまいますわ。
今夜は花湯でしたから、香油は少なめにしていますけれど。
準備を整えていると、女官が陛下の訪れを告げる。
お妃様が出迎えに出られるのを、私共も後から追った。
「先程までも一緒だったのにな… 早く君に会いたかった。」
お妃様の顔が湯上がりのせいではなく真っ赤に染まる。
下ろした栗色の髪に触れて、その一房を指に絡めた陛下はそれを自分の唇に押し当てて微
笑われた。
「良い香りがするな――― 今宵は君が花か。」
「〜〜〜ッ」
矢継ぎ早に降る愛の言葉に、さすがのお妃様も言葉を返せないようす。
さらに陛下は顔を寄せられて、耳元で何事か囁かれたようだった。
ああ、残念ですわ。今の言葉は聞けませんでした。
どんな甘やかな睦言だったのでしょう。
ですが、仕方ありません。私共にはそれを知る術はありませんもの。
お妃様の耳まで赤いあの横顔から想像するしかありませんわ。
「―――下がれ。」
陛下が手を挙げて退出の合図をされる。
残念ですが、今日はここまで。
これからの時間はお2人だけのものですもの。
お2人を残して、私共は音なく部屋を出ることにしました。
そうしてこの後、私共はお2人のことで話に花を咲かせるのです。
明日もきっと良い日になることでしょう。
陛下とお妃様のお傍で過ごす毎日。
それはなんて、素晴らしくて楽しい日々。
<夕鈴、心の叫び>
(よ、ようやく終わったー…!)
2011.11.11. UP
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侍女さん達もきっと見てないとこであれこれお話してるんじゃないかなーと。
夕鈴にとっては長い一日の終わりです。
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