@陛下&浩大




 執務机に頬杖をつき、しかめっ面で書簡を読む姿は端から見ても機嫌が悪いと分かる。
 まずオーラがどす黒くて、普通は近寄りたくない。

 でも浩大は知っていた。
 ――――この状態の陛下はからかうと面白い。

「機嫌悪そーだねェ 陛下。」
 ケラケラと笑いながら、窓枠に腰を下ろして笑う。
 気づいた陛下が顔を上げてじろりと睨んできた。
「誰のせいだ。」
 浩大、と名を呼ばれ、心外だという顔をする。
「えーオレのせい? 仕事してるだけなのにサ。」
「…途中で酒を持ち込んだのは誰だ。」
 その言葉で浩大は不機嫌の理由を知った。

(お妃ちゃんに会えなくて機嫌悪いワケね。)

「仕方ないなぁ。陛下にこれをプレゼントしますから。」
 だから機嫌を直して欲しいとあたたかいそれを手渡す。
「おまんじゅう?」
 首を傾げる陛下の前で、浩大は手にしていたもう一つを口に頬張った。

 皮はふっくらと柔らかく、中の餡は絶妙な甘さ加減だ。
 つまりとっても美味い。

「お妃ちゃんって料理上手いッスね。」
 こう言えば、これが誰の手作りか分かるはず。
「…どういうことだ?」
 …分かったらしくて、また睨まれた。

(うわぁ… 余計怒らせたかな?)
 だからといって謝る気はさらさらないけれど。

「要らないからって貰ったんですヨ。誰かのために作ったけど、その"誰か"に会い損ねた
 んだって。」
 にやにやと笑って言うと、陛下の黒いオーラが少し和らぐ。

「…私、か。」
「そーゆーこと。」


(絶対今夜はお妃ちゃんに会いに行くんだろうなー)

 そう思ったらまた面白くなって、内心でにやりと笑った。





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