「方淵、昨日言っておいた件についての経過はどうなっている?」 「は。こちらにまとめております。」 陛下に言われ、すぐに用意しておいた報告書を差し出す。 軽く目を通した陛下は完璧だと言って方淵を労った。 「相変わらず早いな。助かる。」 「いえ。」 陛下に認められることは喜ばしいことだ。 しかし、これくらいの仕事ならば当然のことだと自分では思う。 まだ安定していないこの国のために、陛下は解決しなくてはならないことが数多くある。 そのために、一つのことにかまっていられる時間ほとんどはなく、陛下の負担を減らすた めには素早く且つ正確な情報が必要となる。 自分はその手助けをしているだけのこと。 それが臨時補佐官としての勤めだ。 「方淵。ここの収穫量の内訳についてだが…」 「はい。それにつきましては、こちらの資料に。」 そう言って、答えの代わりにもう一つの書類を陛下に前に出した。 こっちの資料は聞かれるだろうと予測して準備しておいたのだ。 何も言われなかったら無駄になるが、それでも一応準備しておくのも臨時補佐官として当 然のこと。 「―――指示以上の応えが返ってくるとはな。」 満足そうに言われたことは、正直に嬉しく思った。 「ならばこの件も方淵に任せようか。」 陛下が視線を送ると、傍らに立つ李順殿から書簡を手渡される。 「この書簡を元に、過去10年間の資料を集めてまとめてくれ。明日の午後までだ。」 「はっ」 仕事が早いからといって量が減るわけではない。 陛下の指示は容赦がなく、早く終われば次の指示がある。 しかしそれは実力を認められている証とも取れた。 だから、自分はいつも求められる以上のものを目指す。 それが方淵の矜恃だ。 臨時補佐官としての、陛下の傍に控える者としての誇り。 ――― 己の力は全て、この国と陛下のために。 --------------------------------------------------------------------- 方淵の陛下への盲信ぶりはむしろ笑えるくらいですが。 その仕事ぶりは夕鈴も認めています。