「あー もうつかれた―…」 文字を追うことすら億劫になって、黎翔は広げた書簡の上に突っ伏した。 「まだ終わってませんよ。」 するとすかさず李順がぴしゃりと言い放つ。 有能な側近は仕事に関して容赦がない。 こちらの都合よりも仕事の効率を選ぶのだ。 「えー もうやだよー」 正直言えば集中力も限界だ。 元々嫌いなデスクワークだから、尚更集中力が切れるのも早い。 身体を動かすことなら何時間でもできるんだけど。 「夕鈴がお菓子作って待ってるのに。」 ご褒美があるから頑張っていたけれど、あまりの仕事量に終わる気配がなくて、すっかり やる気を失ってしまった。 ああはやく夕鈴に会いたい。 「放り出したところで明日仕事が増えるだけです。」 李順の言葉は至極もっともな意見だ。 それも避けたい。でも夕鈴には会いたい。 「うーん… よし!」 しばらくだらだらと考えていた黎翔は、突然立ち上がると人を呼ぶ。 「夕鈴を呼んできてくれ。」 「陛下?」 怪訝な顔をする李順の方をふり返って、ふふんと不敵に笑った。 「夕鈴とお茶をしながら仕事すれば良いんだ。」 そうすれば両方できる。名案だろう。 「…そうですか。」 彼女が傍にいると仕事がはかどることを知っている李順は、渋い顔をしながらも文句は言 わなかった。 どこか疲れたような溜息をこぼされたのは無視することにして。 --------------------------------------------------------------------- 小犬陛下がだらりとしている姿が可愛くて好きv