H夕鈴&青慎




「――――青慎。」
 呼ばれて振り返ると、姉さんがお盆を手に部屋の入り口に立っていた。

「姉さん、どうしたの?」
 本を閉じると短くなった蝋燭の明かりがゆらりと揺らめく。
「やっぱりまだ寝てなかったのね。」
 僕の手元を見た姉さんはクスリと笑った。
「う、うん。」
 姉さんと義兄さん(?)のことを考えていて、勉強に集中できなかったとは言えない。
 曖昧に笑って答えると、姉さんは本を少しどけてお盆を机上に置いた。

「お夜食持ってきたの。食べる?」
「ありがとう。」
 消化に良さそうなお粥と、姉さんが去年漬けていた梅干し。
 久しぶりの差し入れに嬉しくなって早速手を伸ばす。
 姉さんはいつものようにすぐには戻らずに、机の傍に椅子を持ってきて座った。

「勉強の方はどう?」
 姉さんは勉強に関してはあまり口を出さない。
 熱が出ても勉強してたりすると怒るけれど、僕が自分で選んだことだから基本的には本人
 の責任だと任せていた。
「好きだから楽しいよ。登用試験を受けるにはまだまだだけど。だからもっと頑張らなく
 ちゃ。」
 姉さん相手に嘘はつけないから正直に言う。
 すると姉さんは嬉しそうに笑った。
「青慎は頑張り屋さんね。まだ起きてるの?」
「ううん。この蝋燭が無くなる前には寝るつもり。」
 だいぶ短くなったそれは、あと半刻もすれば無くなるだろう。
「そう。じゃああと少しね。」
 邪魔をしたくないからと、姉さんは席を立って椅子を元に戻した。
「おやすみ、青慎。」
「おやすみなさい、姉さん。」
 空になった食器をお盆に乗せて、姉さんは手を振って部屋を出る。
 姉さんの夜食のおかげで頭も冴えたし、集中できそうだと思って再び本を開いた。


 もっともっと勉強して、早く官吏になりたい。
 官吏になって姉さんを安心させたいんだ。

 僕のために頑張ってくれている姉さんのために。
 今度は僕が、助けてあげたいから。





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仲良し姉弟☆ 夜に陛下と青慎が話をしたもっと後くらい。
夕鈴がブラコンになるのも分かる気がします。



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