バチリ 音を立てる勢いで、2人の間に火花が散る。 夕鈴と方淵の睨み合いは今日も飽きずに行われていた。 バチバチッ 言葉は交わさないが、目だけで互いに喧嘩中。 ある意味熱い視線を送りあう2人は、意思の疎通ができている。 「…夕鈴。」 「はいっ」 静かな陛下の声に、夕鈴の視線が方淵から外れた。 陛下の方を弾き見ると、甘い狼陛下の微笑みを向けられてどきりとする。 「すぐに終わらせる。もう少し待ってほしい。」 回りくどい言い方ではあるが、つまりもう止めろということか。 向こうが睨んでくるからだけれど、それで政務の邪魔になってはいけない。 「はい…」 頬を赤らめて、扇で顔を隠す。 それ以降、方淵と視線は合わなかった。 「―――貴女はいつまでここにいるんだ?」 政務室を出た時にちょうど方淵と出くわした。 (てゆーか、ぶしつけに聞くことそれ!?) 内心はムカムカしながらも、お妃スマイルで返す。 「陛下が望む限りですわ。」 再びバチリと火花が散った。 (やっぱりこの男はむかつく!) 「……ところで、陛下から渡された栄養剤はちゃんと飲まれてますか?」 お妃演技ができなくなるほどイライラする前に話題を変えよう。 もうすぐ陛下も出てくるから、そうしたらすぐここから離れられるし。 「もちろん全て厳重に保管している。」 「は?」 いつかのようにきっぱり言われて目が点になった。 たくさんあったから、半分を方淵にあげようかと陛下が提案したと思うんだけど。 「いや、あれだけあるなら飲みなさいよ!?」 これでは何のために渡したのやら。 あのまま飲まずにいても、いずれは腐ってしまうだけなのに。 「貴女はバカか。陛下が私のためにくださったのだ。恐れ多すぎて飲めるわけがないだろ う。」 この際バカと言われたことは置いておこう。 バカはそっちじゃないのと言いそうになったのも何とか抑えた。 けれど、 「アンタどんだけ陛下好きなのよ!?」 思わずツッコミを入れていたのは仕方がないと思うのよ。 --------------------------------------------------------------------- 方淵の盲信ぶりが(以下略)