「陛下ッ」 考えるより先に身体が動いていた。 陛下と相手の間に割り込んで、受ける痛みを覚悟する。 「夕鈴!!」 私を呼ぶ陛下の声は、泣いている子どものようにも聞こえた。 「―――夕鈴?」 次に目を開けた時、陛下の顔が間近にあってビックリする。 背中に飛び出したはずなのに、今は彼の腕の中にいた。 「君は私の話を聞いていたのか?」 狼陛下の冷たい声音に背筋がひやりとする。 怒っているのは夕鈴にも分かる。その理由も。 「逃げろと言ったはずだ。」 言われた、確かに。 本当はいない方が良いのも分かっている。 あんなことをすれば下手をすると死んでいたのも。 どうやら今回は2人とも怪我していないけれど、いつもそうとは限らない。 分かってる。ちゃんと。 でも、ダメなのだ。 「い、嫌ですっ」 怖かったけれど、それでも自分の意志をはっきり伝える。 怒っているのは私のためだというのも分かっていたけれど。 それでも。 「何度言われても、私は同じことをします。」 「夕鈴…」 そんな顔をされても引かない。 怖いけれど… 怖くない。 「引きません。だって、私は貴方の妃ですから。」 続きを飲み込んだ陛下の瞳を真っ直ぐに見る。 「私も、貴方を守りたいんです。」 言葉の代わりに強く抱きしめられた。 私の名前を呼ぶ陛下の声が震えていたのは気のせいだろうか? --------------------------------------------------------------------- そんな夕鈴も愛しいと思う陛下が良いなと思います。