3:李順にも聞いてみました。(妹)



 行き慣れた李順の執務室に行くと、彼はちょうど一段落したところだったようで、女官に
 お茶の準備を頼んでいるところだった。
 ついでに自分もと言うと、心得ている相手は笑顔で「はい」と言って下がっていく。

 ―――彼女だけでなく、傍で見ていた女官達は皆 恋する乙女の味方。
 こういう時、さりげなく2人きりにしてくれるのも、いつものことだった。




「あの2人の馴れ初めですか?」
 聞き返されたので茶杯を口に付けたままこくりと頷く。
 椅子は近くにあるのを李順の席まで自分で引っ張ってきた。
「李順しか知らないって言われたの。」

 李順は仕事の邪魔さえしなければ追い出すような人じゃない。
 だから、いつも彼が言い出すギリギリまでいたりする。

 その際、2人きりでお茶ができるなんて嬉しい…というのは顔には出さない。
 3年は長いけど、本気を示さないといけないから。
 それはお母様からのアドバイス。


「―――知りませんよ、私も。」
「え?」
 彼ならと思ったのに、さらっと否定されてしまった。
「知り合うきっかけを作ったのは確かに私ですが、そちらの意味なら私が分かるわけがあ
 りません。」

 そういえば、李順は反対してたんだっけ。
 それをお父様が無理矢理押し切ったのよね、確か。

「本人方にお聞きしては? 盛大に惚気てくださいますよ。」
 李順は呆れ顔だったけれど、それも良いかなと思って鈴花は頷いた。



「あ、それじゃあ あと一つだけ。李順から見て2人はどう?」
「―――良いのではないですか。」
 意外な返答だった。
 思わず瞬くと、相手からは心外だという表情で返される。
「夕鈴殿でなければ陛下を止められる者はいませんし。…もっとも、他の方なら私ももう
 少し楽だったのでしょうが。」
 深い深い溜め息は、何かを思い出してのことだろうか。
 お母様は昔から無茶ばかりしてたようだし。


「公主、くれぐれもお母様の真似はなさらないように…」
「私は屋根に登ったりなんかしないわ。」
 …壷は投げるかもしれないけれど。

「それと、軽率な言動も慎まれて下さい。」
「……」
 何のことを言っているのか分かってしまったから、そこは黙り込む。
「そういうしらばっくれるところはお父上にそっくりです…」


「………だって、軽率なんかじゃないもの……」
「? 何か?」
 その問いには答えずに、茶杯の中の最後の一口を飲み干した。




2011.12.28. UP



---------------------------------------------------------------------


3年後の李鈴妄想が止まらなくてつい書いてしまいました。
この頃の李順さんは側近ではなくて、宰相くらいになってそうな気がします。
だからそんな設定です。



BACK