4:そんなわけで、父に聞いてみました。(兄)
「私が夕鈴のどこに惚れたか?」
差し出された書類から顔を上げて、父から怪訝な顔で聞き返される。
「…それは今ここで聞くことなのか?」
―――ここは政務室、父が座るのは執務机。
つまり、思いっきり仕事中だ。
「さあ? ただ鈴花が今すぐ聞いて来いと言うので。馴れ初めを聞きたいそうです。」
基本的に凛翔は可愛い妹の願いは聞くようにしている。
それに今は政務もそんなに忙しい時期でもないし、別に良いかと思って。
「それは難しい質問だな。―――きっかけというなら初めて会ったときかもしれんし、逃
がしたくないと強く思ったときかもしれん。」
父もつまらない書類よりはと思ったのか、書簡を脇に放って凛翔へと向き直った。
「彼女の言葉は全て私の心を揺さぶるし、笑っていても泣いても怒っても彼女を愛しく思
う。」
「――――…」
そこまで聞いて、凛翔はまずいなと思った。
(止まらなくなりそうだな…)
鈴花の頼み事は、つまり惚気話を聞いてこいということで。
母のことになると父の言葉には際限がないのだ。
忘れていたわけではないが、少し楽観していた自分を責める。…しかしもう遅い。
「日毎に美しくなる夕鈴への愛は深まる一方で、冷めることを知らない。その瞳に私以外
が映れば振り向かせたくなるし、他の名を聞けばその口を塞ぎたくなる。」
(…息子に言うものですか それ。)
声は挟めそうになかったので内心でツッコむ。
微妙に分かる年頃なだけに複雑な心境だ。
「―――言えば尽きないがまだ必要か?」
それを真顔で言わないでもらいたいと思う。
冗談の方がまだ良い。
「いえ、十分です。続きは帰って鈴花に直接言ってください。」
周りの官吏達はあまりの甘さに絶句している。
慣れている凛翔ですら引いてしまったくらいだから当然だと思うが。
―――今ここに母がいなくて良かったなと思ったのは、凛翔だけだろうか。
2011.12.28. UP
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陛下の愛はとどまることを知りません。
ってゆーか、書いてる自分が1番楽しいというか。
頑張れ息子!
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