7:夜は夫婦の時間です。



『あの後、お母様を宥めるのは大変でした。』

 溜め息を付きつつそう言ったのは娘。



『わざと怒らせるなら、私達を巻き込まないようにして下さい。』

 呆れつつ釘を刺してきたのは息子。





「まだ怒ってる?」
「…怒ってなんかいません。」
 そして 今、目の前でそっぽを向いているのが、愛する妻。


 夕鈴は怒った顔も可愛い。

 だけど、それを言えばますます油を注ぐ結果になるのは分かりきっていたから。
 今はその言葉は胸に留める。
 思わず緩みそうになる頬も引き締めて、代わりに狼陛下の微笑を乗せた。



「―――昼間、君は私の謝罪は口先だけだと言った。だから今は謝らない。」
 そう言って、長椅子に座る すぐ隣の細腰を引き寄せる。
 赤く色付く頬を撫で、自分が映り込む大きな瞳を覗き込んだ。

「君が口先だけだと言うのなら、私は心からの言葉を伝えよう。」
「そ、そこは態度で示すと言うところじゃないんですか!?」
 彼女は必死で腕を伸ばして距離を置こうとするが、もちろん離さない。
「態度? 私に君に触れるなと?」
「人前では自重してくださいと言ってるんです!」

 朝怒ったのは、侍女が呼びに来ても彼女を離さなかったから。
 昼間は、四阿という誰に見られるか分からない場所だったから。

「…そうか。」
「?」
 黎翔が神妙に頷いたのを見て、彼女は怪訝な顔をする。
 今彼女自身が言った言葉の意味を、彼女は自分では理解していないらしい。
 まあ別にそれでも良い。
「陛下…? っきゃ!?」
 彼女が逃げ出す間も与えずに抱き上げてしまうと、黎翔は夕鈴を連れてさっさと居間を後
 にした。


「え、ちょ、どこに…」
 腕の中で彼女は慌てふためき、困惑の表情で見上げてくる。

 今は夜、侍女達も下がって2人きり。
 この状況で、他にどこに連れて行くというのか。


 黎翔は腕の中の愛しい妻に向かって艶やかに笑んだ。
「―――つまり、2人きりなら何をしても構わないということだろう?」
「!!?」




 そしてまた、いつもの朝のくり返し…?




2012.1.6. UP



---------------------------------------------------------------------


オマケなので短めに。
いつまで経っても仲良し夫婦です(笑)


遅くなってすみません(汗)
年末年始は旅行中、帰ってきてから寝込んでました〜
もうだいぶ元気です。ポカリスエットは必需品です。
今年もよろしくお願いします。




BACK