僕が一番怖いもの、

 君が離れてしまうこと、君を失ってしまうこと。

 ―――君がいない世界で生きていかなくてはならないこと。



 時々怖い夢を見るよ。
 君がいなくなってしまう夢。

 君が消えると僕は僕でなくなる。
 光が見えなくなって、世界から色が消えてしまって。
 心が死んでしまうんだ。


 そして決まって目が覚めても夜で、朝はまだ遠くて。
 夢が夢じゃないかもって思うこともある。

 そんな時はこっそり君に会いに行って、いることを確かめたりする。
 君はいつも夢の中だから気づいていないだろうけど。



 ねえ、知ってるかな？

 僕達の別れは君次第なんだ。
 君が本気で離れたいと願うなら、僕は君を止められない。

 …たとえ別れの後で心が壊れても。




 だから、お願いだ。

 逃げないで、嫌わないで。

 …でも、そんなことは言えないから、僕は君が言わないようにするしかなくて。




「甘やかさないで下さいってば！」
「えー」
 君の抗議を、僕はいつも笑って誤魔化す。



 だって他に方法が分からないんだ。
 どうしたら少しでも長く君を留めることができるか。

 他に分からないから、優しくするしかできない。
 甘やかしてるんじゃないよ、ただ僕が不安なだけ。

 狼陛下を怖がる君に、僕ができるのはそれくらいだから。



 ずっとだなんて望めない。
 ただ１日でも長く、"ここ"にいて。


 君のいない世界では、僕はもう生きていけないから…




2012.1.13. UP



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こちらは黎翔→夕鈴です。

陛下は諦めちゃったのかな。
いつまで経っても夕鈴は怖がってて（本当はドキドキしてるんだけど）、だったら側にいてくれるだけで良いって。
夕鈴、その誤解は解いてあげた方が良いと思うんだ…陛下が可哀想だよ……