episode0:後朝



 ――――朝、目を覚ましたら独りだった。


 温もりの消えた場所に触れ、頬を流れたひとしずく

 痛いのは身体ではなく心


「貴方には、気まぐれの一夜でも…」
 私には、永遠に等しい一夜だった。
 これが夢でも仕方ないと思えるくらい幸せな夜だったから。


 鈍い痛みに耐えつつ起き上がると、上に掛かっていたものがするりと肩を滑り落ちる。
 それを見下ろして呆然となった。
「…これ… 陛下の、上掛け……」

 そうして、何も着ていない自分に気がつく。

 身体中に散る赤い痕、
 朝日の下で、それはくっきりと浮かんでいた。

「っ!?」
 真っ赤になって、上掛けを羽織って前をかき抱く。
 大きな上掛けはブカブカだけれど、何も着ていないよりはマシだと思った。


 ―――あの人の匂いがする。

 それで安心してしまう自分に苦笑いした。



「……あら?」
 彼がいた場所に紙切れが置いてあった。
 何だろうと思って拾う。

 どこまでも伸びやかで流れるような彼の字。

 最初に書かれているのは… 私の名前?


『 夕鈴、君だけを愛している
  夜は明けず、夢は覚めない
  私だけの花、永久(とわ)に君だけを―――― 』


「――――…ッ」
 ぼろぼろとまた涙が零れる。
 愛の言葉を胸に抱いて静かに泣いた。





『 今宵また、君のもとへ 』


 最後に添えられた一言を何度も見返す。

 これは夢じゃないと貴方は言うの?
 それをまだ、私は信じきれていないけれど。


 今夜会えたら、答えも見つかるかしら…?




2011.7.31. UP



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―――で、陛下の本気度を思い知らされる、と。

初めての朝の話です。
後朝はきぬぎぬと読みます。平安時代の言葉ですけど、個人的に好きなんです。
うん、これは中華ファンタジーですよね。気にしないでください。←
最初はR指定付けてたんですけど外しました。
夕鈴が素っ裸ってだけなので別にいっかなーって。小説だから。



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