scene4-2:書庫





 ※ 見る方は自己責任で。R-15で指定してます。













 陛下は呼ばれて本殿へ行ってしまった。
 後宮に戻ろうかとも考えたが、陛下に待っていて欲しいと言われたら拒否なんかできるは
 ずもない。
 ―――もちろん嫌などと思うわけもなく、ただ暇だなと思うだけで。
 だったらその間に書棚の片づけをしようと思いたち、官吏達が散ってから書庫に入った。



 書庫には部屋を埋め尽くさんばかりの書簡・竹簡が置いてある。
 たいていはきちんと並べてあるのだが、たまに忘れられてだったり場所が分からなくなっ
 たりで、机の上に置いたままのものがあった。
 まずはそれを棚に並べていくことから始める。
 それが終われば、次は雑然とした棚の中の整理だ。

 誰に言われたわけでもないが、夕鈴はこれを自分の仕事にしていた。
 忙しくしている陛下や他の官吏達と比べて何もせずに座っているだけの自分。それがとて
 も申し訳なくて。


「―――ここにいたのか。」
 甘い甘い声が降ってきたかと思うと、突然後ろから抱きしめられる。
 誰かは分かるけれど、問題はこの場所だ。
「陛下…っ!?」
 抗議しようと顔だけ振り返ると、すかさずといった風に唇を塞がれてしまった。

 軽い音を立てて、すぐに唇は離れる。
 目の前には、してやったりな陛下の顔。
 叫んでやりたいところだけれど、それで誰かが来ても困るし。
 それが李順さんだったら最悪だし。

「だ、誰かに見られたら…」
 できるだけ小声でぼそぼそと抗議する。この距離で聞こえないはずはない。
 片手には書簡を持っていたから、もう片方の手だけで彼の胸元を押し留めた。
 顔を逸らしたのは、小さな抵抗のつもりだ。

「夫婦なのだからおかしくはないだろう?」
 その抵抗をあっさり無視して彼は無理矢理こちらを向かせる。
 近すぎる距離に赤くなる夕鈴に彼はおかしそうに笑った。
「慣れないな。」
「悪かったですね! どうせ、おと―――…」
 続く言葉は再び塞がれたことで封じられる。

「ん… っ」

 今度は触れるだけじゃない。
 吐息さえも飲み込まれて、次第にキスは深くなる。

「…ぁ……ん…」
 上手く息ができなくて瞳が潤む。
 それでも行為は止まない。

 力が抜けて書簡が床に落ちる。
 けれど、音を立てて転がっていくそれに目をやる余裕はなかった。


「……―――!」
 唇を割って舌が入り込んでくる。
 内側をなぞった舌が夕鈴のそれを絡め取り優しく吸い上げた。
「っ …ぅ、ん…ッ」
 びくりと震えてとっさに引いた背中が棚にぶつかる。
 逃げ場をなくした夕鈴の頭を引き寄せて、さらにもっとを求められた。


「夕鈴――――」
 少し掠れた低い声は思考さえも甘く溶かす。

 キスに酔う。
 優しく激しく、貴方は私を求め、私は貴方を受け入れる。

 胸元に添えた手でぎゅっと服を掴む。
 気づいた彼は微かに笑ったようだった。


「…っは……」
 最後は唇を舐められる。
 赤く艶めいていてどきりと胸が高鳴った。

「…美味しそうだ。」
 見下ろすのは狼陛下。
 獲物を狙う瞳が妖しく光る。

「陛下の馬鹿…」
 対抗するのは目まで真っ赤にした兎。
 負けじと睨み返す。

「こんな顔じゃ戻れないじゃないですか…ッ」
 虚を突かれた顔をした陛下が、少ししてフッと笑った。
「―――そうだな。」
 そう言って力が抜けてしまった彼女を抱き上げる。 
「こんな君を他の誰かに見せるなど勿体ない。」
 何だか楽しそうに見えるのは気のせいだろうか。


「…えーと、どちらに?」
「後宮だが?」
 おそるおそる尋ねてみると、あっさりと答えが返ってくる。
 うん、予想通りの答えだわ。
 でもどうして狼陛下なのかしら…?
「もちろん、私を置いたら戻られるのですよね?」
「…さて、どうしようか?」
 この意地悪な笑みは、絶対に何か企んでるっっ
「戻ってくださいよ!? 李順さんに怒られるのは私ですからね!」


 結局その後、夕鈴の説得に折れて、陛下は渋々政務室に戻ったのだとか。




2011.7.31. UP



---------------------------------------------------------------------


方向性間違っちゃった第2弾。
キスでどこまでエロくなるかを…(待て)
表現は抑え込みました。ええ。



BACK