scene5:湯殿
※ 見る方は自己責任で。R-15で指定してます。
あ、場所はあれですが、別に何もやってませんよ?
湯気が立ち、視界を覆う。
温かな湯が身体を包み、疲れが解れていく感覚がする。
1人で広い湯船に浸かって、夕鈴はようやく一息付いた。
後宮ではいつも誰かがそばにいて落ち着くことができない。
こうして1人になれる時間はとても貴重だ。
「んー 気持ちいいー!」
足を伸ばして手を組み、思いっきり伸びをする。
その時ちょうど二の腕の内側に紅い痕を見つけてしまい、そのままぴしりと固まった。
消えない花、
あの人に愛された証、
ちょっと巡らせば、他に肩や胸元にも見える。
探せばもっとあるんだろうけど、恥ずかしくてあまり見たくはない。
『夕鈴』
甘い声を思い出す。
最中に何度も呼ばれる、あの声を。
近くで見れば見るほど綺麗な人。
逞しい腕も、引き締まった筋肉も。全てが完璧に整っていて、いつも見惚れてしまう。
こんな人が私の恋人だなんて信じられないと思う。
しかもこの国の王様だなんて。
でも、熱を帯びた瞳は私だけを映していて、大きな掌はいつも優しく触れてくる。
そんな時は、彼は私だけのものだと思えて――――
(って、ちがーう!!)
余計なところまで思い出してしまった。
そんな自分が溶けそうになるほど恥ずかしい。
「〜〜〜ッッ」
違う意味でもノボセそうになって立ち上がる。
このままここにいると思考がますます変な方向に行ってしまいそうだった。
「早いとこ出ないと、陛下も――――…」
後ろを向いたところで言葉が途切れる。
「!!?」
目の前に、今まで思い浮かべていたはずの人が立っていた。
「きゃあ!!」
色気なく思いっきり叫んで再び湯船に逆戻り。
肩まで浸かって体を隠し、柱に凭れた彼を睨み上げた。
「ど、どうして陛下がここにいるんですか!?」
「あまり遅いからと、侍女達が心配していたからな。」
最近は1人で入ると言い張って誰も近づけないようにしている。
身体中のキスマークなんかを誰かに見られたら恥ずかしさで絶対死ぬ。
…自分達では呼びに行けないから陛下に頼んだというところか。
うん、それは分かるんだけど。侍女達は本当に夕鈴を大事にしてくれるから。
でも、タイミングが微妙だった。
「見ました!?」
「…あー 湯気であんまり見えなかったよ。」
答える彼を半信半疑でじっと見る。
彼の視線は湯の中に向けられたままだったから。
この人は演技が上手すぎるから、本当か嘘か本当に分からない。
…それでも好きな自分も大概だけど。
だからこれが嘘でもきっと許してしまうのだ。
(これも惚れた弱みというのかしらね…)
*
疑いの眼差しで見つめられながら、どう誤魔化そうか考える。
―――もちろん見えていないなんて嘘だ。
本当はしっかり見ていた。
濡れる白い肌に紅い花、ふくよかな胸も。
残念ながら腰から下はまだ湯の中だったけれど。
それでもこちらの欲を煽るには十分だ。
「…すぐに戻りますから、先に行っててください!」
結局それ以上は追求されないまま、隠した彼女にあっちに行けと言われた。
「えー」
「えーじゃありませんっ」
思わず正直に漏れ出た抗議の声に怒鳴り返される。
「今更…」
「何か言いました!?」
ぼそりと呟くと、今度はギッと睨まれてしまった。
でもここで引くのももったいない気がする。
こんなチャンス逃したくない。
近くに置いてあった、体を拭くための大きな布を広げて微笑む。
「おいで。」
「い、嫌です!」
やっぱりというか、真っ赤な顔で即否定された。
「強情だなぁ。早く出ないと上せるよ。」
「陛下が戻れば良いんです!」
彼女的にはそれで解決だ。
でも僕的にはそれじゃ全然つまらない。
「…だったら、ここでしても良い?」
「!!?」
意味はちゃんと伝わったらしい。
ぎょっとなった彼女が思わず身を引いた。
「そういえば寝室以外でってまだだったよね。僕は全然構わな―――」
「出ますからそれ以上言わないでください!!」
ぎゃーっと彼女は耳を塞いで叫ぶ。
本当に恥ずかしがり屋だなぁと笑った。
布を広げたまま端近にくると、勢いよく上がってきた彼女が腕の中に飛び込んできた。
早く巻けと睨まれて白い布を彼女の身体に巻き付ける。すると、大きな布は彼女の肩まで
をすっぽりと覆ってしまった。
でも、それでも、ちらりと覗く白い足とかほんのり赤い首筋とか。
それだけでも己の中の劣情を刺激される。
「…柔らかくて温かくて、ほんと美味しそう。」
「なん…ッ!?」
思わず本音がぽろりと漏れる。
聞こえてしまった夕鈴は、赤い顔をさらに真っ赤にして口をパクパクさせた。
どうやらかなり動揺しているらしい。
「可愛いなぁ」
くすりと笑って彼女を抱き上げる。
彼女を隠しているのはこの布一枚きり。
熱も柔らかさもいつもより近い。
これで何もしないのは男が廃るというものだ。
こんなに美味しそうな兎を逃すなんてできるはずもない。
「寝台ならオッケーなんだよね?」
わざと耳元で囁き、項にキスする。
痕を付けると怒られるから、唇で辿ってたどり着いた耳朶を甘噛みすると小さな悲鳴が上
がった。
「…ゃ……ッ」
すでに腕の中、反論も抵抗も今更でしかない。
しかもそんな声では煽るだけだ。
「朝までたっぷり可愛がってあげる。」
「〜〜〜っっ!?」
可愛い兎を手に入れた狼は、上機嫌で湯殿を後にした。
2011.7.31. UP
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方向性間違っちゃった第3弾。別に何もしてませんが、会話が…
陛下… セクハラ度が上がってますよ。
誰かこの人止めてください。
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