第四部『夢遊び』




☆本誌11月号本誌まるごとストーリー・がっつりネタバレ含みます。
 コミックス派の方は、Uターン推奨。


 

 星の綺麗な星離宮 

 念願の、君と二人だけの時間 


 それは、とっても楽しい時間だった―――はずだけれど。 


『ゆうりん!!』 
 今、彼女を呼ぶ自分の声は 少し焦っていた。 

『ゆうりん!!   ここじゃ・・・風邪を引いてしまうよ。』 
 必死で彼女を呼ぶ声も、今はほとんど君に届いていない。 


『起きてったら・・・・』 

 困った。 
 この状況は本当に困る。 

『起きてよ。夕鈴!!』 



 星遊びをしていたら、いつの間にか隣で君は眠ってしまった。 
 夏とはいえ、夜は冷え込む。これで夕鈴が風邪を引いてしまったら大変だ。 

 夕鈴を心配して、僕は君を起こすべく、再度挑戦を試みた。 

『夕鈴、起きないと風邪引くよ。』 
「んーーー、へいかぁ。あと少しだけ・・・もうちょっと・・・すぐに、起きる から・・・」 
 眠ったままへにゃりと笑った彼女は、僕の襟(えり)を握り締めたままで。 
 消え入りそうな声でむにゃむにゃと呟くと、また深い夢の中へと旅立っていった。 

 いつもは、甘えることの無い、常ならぬ君のわがまま。 
 それをカワイイと思ってしまい、甘えられていることに嬉しくなってしまう。 

 僕の腕の中で無防備に眠りにつく君は、とても無邪気で・・・ 


 だけど、今日はいくらなんでもマズイよ、夕鈴。 

 君の昼間の姿が僕の瞼の裏から消えないんだ。 


 理性と忍耐という檻の中で、かろうじて抑えている僕の本能が、君が欲しいと暴れだす。
 声を上げて吼(ほ)え叫ぶ。 
 少しずつ強さを増してゆくこの本能を、僕は押さえ切れない。 
 静まらない、強欲に僕の理性の檻は、脆くも限界に近づいている。 


『ねぇ。夕鈴・・・ 起きて・・・・・・』 
 僕の胸に寄り添い、深い眠りにまどろむ君の髪を梳く。 

 星明りにほんのりと輝く 君の髪は、綺麗で・・・ 
 何度も何度も手のひらで撫で下ろし感触を楽しんでいく。 

 いつもの髪の香り、そのぬくもり・・・ 

 いつもなら、嬉しく感じて心安らぐはずなのに・・・ 
 今日は、こんなにも辛い。 

 柔らかな君の身体とぬくもりが邪(よこしま)な僕を責め、苛(さいな)む。 
 むくむくと膨れ上がる君への想いにいっそ素直になれば、僕は楽になれるのだろうか? 

 君の眠りを破り、この穏やかな関係性を壊して、 
 君の柔らかな唇を奪い、無垢な身体を蹂躙(じゅうりん)して、 

 君の味を知りたいと思う この心は罪なのだろうか・・・ 
 君のことをもっと知りたいと願うのは 僕には許されないことなのだろうか・・・ 

 安らかな寝息の君は、僕の邪な悩み事など知らず、無垢に眠る。 


 ―――その寝顔を見ていたら、毒気を抜かれてしまった。 

 やっぱり、君は凄いよ。僕は、初めから君に降参だ。 
 どの感情も、すべて君が僕にくれる。 
 君だけが、僕の心を動かせる。 
 はじめから、僕が君に敵わないなんてことはわかってた。 
 はずなのに・・・それなのに・・・渦を巻く僕の心。 
 それさえも君がくれた感情。 


『ああ・・・・ほんとうに、君をどうしてくれようか・・・』 
 狼陛下と怖れられるこの僕が、世界中でたった一人。君だけに敵わない。 
 翻弄されてかき乱される・・・・夕鈴、君一人だけなんだ。君はそれを知っているかな。 

 無邪気に眠る君が時々、憎らしいよ。 
 無防備すぎる君に、今すぐ警告してやりたい。 


【狼陛下は、本当に狼なんだよ。君を食べたくてしょうがないんだ】  


 警告したら、君はどんな顔をするのかな? 

 狼になりそこねたの僕は、眠る君の額に口付けた。 


【まどろむ君のその夢に、僕もいるといいな・・・】 



【夢の中でも、遊ぼう。もっと遊ぼうよ。夕鈴。星の綺麗な今夜のように・・・・。】 
 




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というわけで、さくらぱんさんのSNS日記20000キリ番記念の企画でした☆
タイトルが少しずつ変わってるのがポイント? ←え?
見事なお約束オチで忍耐勝負の陛下☆ ファイト〜(鬼)

現在、第三弾を制作中です。
そしてどうやら第四弾もあるらしいですよ(笑)
うーん、楽させてもらってるな〜

2012.12.22. 再録



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