ドラマ『狼陛下の花嫁』




@主役の二人


 大人気ドラマ『狼陛下の花嫁』は、「王道かつ斬新なもの」を求め続ける可歌まとが脚本
 を手掛ける王宮ラブファンタジーである。

 今回の新たな試みとして、役者名をそのまま役名にあてる方法を採用。
 その結果、平均視聴率30%越えの大成功をおさめ、下町が舞台の劇場版を挟んだ後、現在
 は春の宴編を放映中―――…





「黎翔さん?」
 夕鈴が一人撮りを終えて戻ってきたとき、黎翔は虚空を睨みつけていた。
 視線の先には壁しかないし、手に持った紙コップのコーヒーは冷め切っている。
 一体どうしたのだろうと思いながら声をかけると、彼は今気づいたという風に顔を上げた。
「夕鈴、お疲れ様。―――何か言った?」
「そんなに難しい顔してどうしたんですか?」
 夕鈴の問いに「しまった」という表情を一瞬だけ見せて、彼は苦笑いで返す。
「…いや、今回も君の演技に助けられてしまったなって。」
 彼が言っているのは先ほどのラブ(?)シーンのことらしい。
 けれど、夕鈴からすれば凹むほどのことではなかったと思う。
「それは私の方がキャリア長いですから。これで負けてしまったら私の芸歴台無しですよ。」

 夕鈴は子どもの頃からこの世界にいる。
 活動は舞台が中心でドラマ出演は多くないが、ほぼ年齢がキャリアになるほどの芸歴の長
 さだ。
 年齢は黎翔が上でも芸歴の長さは夕鈴の方がダントツ長いから、少しくらい夕鈴がリード
 しても当然の流れだし誰も何も言わない。
 彼が気にすることは何もないはずだ。
 今回のドラマが初主役で力を入れているのは分かるけれど、そんなに気負わなくてもいい
 と思う。

「君と演る度に自信を失くしそうになるよ。…君の演技に引き込まれるとどちらが現実か
 分からなくなるんだ。」
 そんなことを言いながら、彼はおもむろに夕鈴の手をすくい上げた。
「君へ向かうこの想いは本物なのか偽物なのか…… 君は、どちらだと思う?」
 紅色の瞳が夕鈴を真っ直ぐに見つめてくる。

 世の女性なら誰でも卒倒しそうなくらい艶めいた表情と声音。
 これで落ちない女性がいるなら見てみたいと思わせるほどの色気だ。

 ―――けれど、

「勘違いでしょうね。」
 握られた手をぺしりと軽く払い除けて、夕鈴は平然とした顔で言い放った。
「役に入りきるのは結構ですが、飲み込まれるのは感心しません。」
 予想外に冷たく言われた黎翔は呆気に取られたように目を丸くした後、「残念」と肩を竦
 める。
 さすがは実力派女優だと感心しながら。

「…あーあ。これが役の"夕鈴"なら真っ赤になって暴れるところなのに。」
「甘いですよ。"私"はそんなに簡単には落ちません。」
 夕鈴が不敵に笑って返せば、黎翔は苦笑いするしかない。
 雑誌やテレビでもてはやされている黎翔の演技力も、実力派女優の前では何の力もないら
 しい。


「夕鈴さん、黎翔さん! 次のシーンお願いします!!」
 向こうから二人を呼ぶ声がする。
 それに二人で一緒に返事をし、黎翔は冷たいコーヒーを一気に飲み干して腰を上げた。

「次は負けないからね。」
「望むところですよ。」



 こうしてドラマ『狼陛下の花嫁』は、ますますの成長を遂げていくのである。




2014.1.3. UP



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そんなパラレル小ネタ集です。のんびりいきます。
いやぁ、某様のネタがあまりに楽しくて楽しくて。
思わず書いてしまいましたw しかもシリーズ化。

注意事項的には、みんなキャラが違う。
特に方淵はあまりのギャップに衝撃が走ったようですww

設定は必要ですか?
必要ならば、某様から許可を頂いてきますが。



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