ドラマ『狼陛下の花嫁』




C歌


 大人気ドラマ『狼陛下の花嫁』は、「王道かつ斬新なもの」を求め続ける可歌まとが脚本
 を手掛ける王宮ラブファンタジーである。

 今回の新たな試みとして、役者名をそのまま役名にあてる方法を採用。
 その結果、平均視聴率30%越えの大成功をおさめ、下町が舞台の劇場版を挟んだ後、現在
 は春の宴編を放映中―――…




「夕鈴さん! 今日こそ色よい返事をくれんか!?」
「心からご遠慮申し上げます。」
 姿を見るなり突進してきたおじいちゃんに、夕鈴はにべもなく拒否の言葉を告げる。

 彼の名は張元。このドラマでは後宮管理人という役柄を務めている元気なおじいさんだ。
 その実態はKSK48を作り上げた敏腕プロデューサーであり、見た目以上の行動力を持
 つ。

「なぜじゃ!? お主なら紅珠とダブルセンターを狙えるぞ!?」

 その彼は今、夕鈴を口説き落とそうと必死だった。
 どうにかグループに引き入れようと日々アタックを続けている。
 当然、夕鈴からは毎度冷たくあしらわれているのだが。

「……他のメンバーの反感買いますよ、それ。」
「じゃ、じゃあせめて劇中歌でコンビを! 曲はわしが作る!!」
「結構です。」
「なぜじゃー!」

 これ以上話していても埒があかないと、夕鈴は後ろで叫ぶ彼を置いて撮影現場に戻った。




「ほんと 商魂逞しいおじいちゃんだわ。」
 ドラマ出演の条件に、KSK48の主題歌起用を入れてきたり。
 劇中歌だって今の注目度なら相当売れるはず。
「個人的には嫌いじゃないんだけど…」
 あの猛烈アタックさえなければ話していても楽しい人なのだ。
 それに、あそこまではっきりしているといっそ清々しい。


「―――歌わないの?」
「え?」
 ひょこっと後ろから顔を出されてちょっと驚いた。
「黎翔さん?」
 お疲れ様と差し出されたコーヒーのカップをありがたく受け取りながら、今の言葉に首を
 傾げる。

 私は歌手じゃない。
 歌も演技もなんて器用なことができるのは、経倬さんや浩大達みたいな特殊な人達だけだ。

「でも舞台では歌ってるでしょう? しかも、とっても上手だし。」
「!? な、なんで知って……」
「共演が決まった頃に舞台を見に行ってるんだ。君は気づいていなかっただろうけどね。」

 本当に全然気がつかなかった。
 彼はすでに有名人だったし、周りも騒ぐだろうに。

「こっそり見に行ったんだよ。」
 そう言って、彼は悪戯っ子のように笑う。
「監督がすごく褒めるから、どんな人なんだろうって興味があったんだ。」

(……タラシなの?)
 一瞬頭を過ぎった言葉は、すぐに違うと否定した。

(―――仕事熱心な人なのよね、きっと…)
 
 それは、もうずっと近くで見ているから知っている。
 若手人気俳優だとちやほやされながらも、彼自身はそれに驕ることなく真剣に取り組んで
 いることも、よく知っていた。

「いつもそんなことされてるんですか?」
 夕鈴は、彼が出ていたドラマを見直すこともしなかった。
 今までだってそんなことしたことない。
 毎回そんなことをするなんてすごいと感心していると、彼は違うと首を振る。
「いや、こんなことしたのは君が初めてだよ。」

「ッ!!?」

 不意打ちだ。
 元々綺麗な顔で、そんな風にキラキラした笑顔を見せられてしまったら…
 いくら夕鈴だって動揺してしまう。


 ―――やっぱりこの人 タラシじゃないかしら!?




2014.2.23. UP



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老師はどこでも夕鈴をKSK(妃)にしようとしてますねww
原案者様鋭いわー そこまで考えてなかったわーとコメ見て思いました(笑)
瑠霞姫編のキラキラピクニックにはKSK48がいっぱい出てくると思われwww

後半は微妙に黎夕になりました。予想外ー
ネタはここで終わりですが、浮かんだら続けると思います。

李順さんの出番が全くなかったなぁ。
黎翔さんとは事務所が同じでけっこう仲良しだと思われます。
台本で小突いて黎翔を我に返らせるとかさせたいー

あとはピン芸人克右さんw
意外にお笑い好きな夕鈴が「生で見れるなんて!」と喜んで黎翔さん面白くないとか。

もうちょっと黎夕っぽい展開のネタもあるにはあるのですが…
これ書いたら続きも書かなくちゃいけない気がするので書けないです…



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