ダン ダンッ リズム良く銃声が響き、弾は的の中央へと吸い込まれていく。 何度も打ち込まれたはずなのに、開いた穴は相変わらずただ一つ。 「…ふぅ」 バイザーと耳当てを外し、几鍔は一息ついた。 手元の腕時計を見てみれば、思ったより時間が過ぎている。 そろそろ戻らないと周りが煩い。 「―――さすがだな。」 軽く手を叩く音にふり返れば、上司が後ろの壁に凭れて笑っていた。 「…いつからいた?」 「少し前だ。集中していたようだったから声をかけなかった。」 言いながら壁から身を起こし、バツが悪そうにしている几鍔の隣に並ぶ。 「あれをできるのはこの軍に何人いるかな?」 誉め言葉のつもりで言い、黎翔はクスリと笑う。 「…じゃあ、お前は?」 不敵に笑んでそう聞く瞳は挑戦的。 上司に対するものとは思えない口調と態度で、几鍔は的を顎で指した。 「…さて、久しく握っていないから自信はないが。」 「嘘付け。いつも最前線にいる奴が何言ってんだ。」 几鍔は苦笑いで受け流そうとした黎翔を逃がさない。 自分が持っていたバイザーと耳当てを渡し、やってみせろと目で示す。 それらを苦笑いのまま受け取り、黎翔は今まで几鍔がいた場所に立った。 「―――これは、素晴らしいものを見せてくれた君へのサービスだ。」 愛用の銃を手に、現れた的をまっすぐ見据える。 邪魔をしないようにと几鍔が静かに後ろに下がり、黎翔の周りは静寂に包まれる。 ※ 50%縮小サイズです。原寸はクリック。 ピンと張り詰めた空気に紅い瞳が鋭く光り――― 「何をしてらっしゃるんですか!」 「「!?」」 静寂は第三者によって破られた。 「ゆー、りん…?」 一気に集中力を削がれ、黎翔は唖然とした顔でやって来た少女を見つめる。 しかし彼女はそれに頓着しない。 「司令、李順さんが探してました。」 「あ、ごめん…」 彼は突然いなくなった黎翔を探して夕鈴のところまで来たらしい。 だから早く戻って下さいと夕鈴は怒る。 「几鍔。アンタのことは部下達が心配してたわよ。」 「…ああ。」 そういえば戻る気だったことを思い出して、几鍔も今日は素直に従うことにした。 「―――また次の機会に見せてもらう。」 「ならばそれまでに練習しておこう。」 肩を竦めて2人で笑い、黎翔と几鍔は部屋の前で別れた。 →次へ 2014.6.19. UP --------------------------------------------------------------------- カッコイイ2人を目指してみた小ネタです。 夕鈴じゃなくて李順さんでも良かったけれど、好みで選びました。 結局のところ、黎翔さんの射撃の腕は如何なもんなんでしょう?