紅い華 3




 ダン ダンッ

 リズム良く銃声が響き、弾は的の中央へと吸い込まれていく。
 何度も打ち込まれたはずなのに、開いた穴は相変わらずただ一つ。

「…ふぅ」
 バイザーと耳当てを外し、几鍔は一息ついた。
 手元の腕時計を見てみれば、思ったより時間が過ぎている。
 そろそろ戻らないと周りが煩い。


「―――さすがだな。」
 軽く手を叩く音にふり返れば、上司が後ろの壁に凭れて笑っていた。

「…いつからいた?」
「少し前だ。集中していたようだったから声をかけなかった。」
 言いながら壁から身を起こし、バツが悪そうにしている几鍔の隣に並ぶ。
「あれをできるのはこの軍に何人いるかな?」
 誉め言葉のつもりで言い、黎翔はクスリと笑う。
「…じゃあ、お前は?」
 不敵に笑んでそう聞く瞳は挑戦的。
 上司に対するものとは思えない口調と態度で、几鍔は的を顎で指した。
「…さて、久しく握っていないから自信はないが。」
「嘘付け。いつも最前線にいる奴が何言ってんだ。」
 几鍔は苦笑いで受け流そうとした黎翔を逃がさない。

 自分が持っていたバイザーと耳当てを渡し、やってみせろと目で示す。
 それらを苦笑いのまま受け取り、黎翔は今まで几鍔がいた場所に立った。


「―――これは、素晴らしいものを見せてくれた君へのサービスだ。」
 愛用の銃を手に、現れた的をまっすぐ見据える。
 邪魔をしないようにと几鍔が静かに後ろに下がり、黎翔の周りは静寂に包まれる。


「君へのサービスだ。」
 ※ 50%縮小サイズです。原寸はクリック。


 ピンと張り詰めた空気に紅い瞳が鋭く光り―――


「何をしてらっしゃるんですか!」
「「!?」」
 静寂は第三者によって破られた。



「ゆー、りん…?」
 一気に集中力を削がれ、黎翔は唖然とした顔でやって来た少女を見つめる。
 しかし彼女はそれに頓着しない。

「司令、李順さんが探してました。」
「あ、ごめん…」
 彼は突然いなくなった黎翔を探して夕鈴のところまで来たらしい。
 だから早く戻って下さいと夕鈴は怒る。

「几鍔。アンタのことは部下達が心配してたわよ。」
「…ああ。」
 そういえば戻る気だったことを思い出して、几鍔も今日は素直に従うことにした。


「―――また次の機会に見せてもらう。」
「ならばそれまでに練習しておこう。」

 肩を竦めて2人で笑い、黎翔と几鍔は部屋の前で別れた。




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2014.6.19. UP



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カッコイイ2人を目指してみた小ネタです。
夕鈴じゃなくて李順さんでも良かったけれど、好みで選びました。

結局のところ、黎翔さんの射撃の腕は如何なもんなんでしょう?



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