日常風景




 言いたいことを言い切って、何も反論してこない方淵に興を削がれたのか、馬鹿は何やら
 捨て台詞を残してすぐにいなくなった。
 しかし、それもどうでも良かったので放置する。

 ただ思うのは、何故あれが私の兄なのか。
 名門氾家と肩を並べる家柄の跡継ぎでありながら、どうしてあれはああも馬鹿なのか。
 考えても答えは出た試しがないが、おそらくこれからも見つかることはないだろう。



「―――相変わらずだね。」
 その声に振り返ると、予想通りの人物がそこにいて 方淵は眉根を寄せる。
「貴様、今までどこに行っていた。」
 氾水月、と低く問えば、相手はあまり堪えてない様子で小首を傾げた。
「小休憩に散歩、かな。紅葉があまりに綺麗だったからね。」
 ついうっかり箏曲ができあがってしまったと。いつもののんびりとした調子で答えが返っ
 てくる。
 …満足そうなその顔を殴りたいと思った。

「馬鹿か貴様はっ」
「芸術を理解できない人生なんてつまらないよ。」
 まるで手応えがないそれに、最後は溜息しか出てこない。
 全くどいつもこいつも馬鹿ばかりだ。


「…上が馬鹿だと下は苦労するばかりだ。」
 うちの馬鹿といい、同じ立場の者達に思わず同情したくなる。
「それは大変だね。」
 ところが相手はどこ吹く風。全くの他人事だ。
 そこで方淵の血管がブチッと切れた。
「貴様のこともだっ! 気づけ 氾家長男!!」
「私達の兄弟仲は好調だよ?」
「諦められているだけだろうがッ」











「夕鈴、今日は止めないのか?」
「―――仲が良すぎて止めるのも馬鹿らしいので良いです。」

「では、私達も仲良くするか。」
「……そこに繋がる意味が分かりません。」




2012.11.6. UP(2012.11.20 一部修正)



---------------------------------------------------------------------


ある日突然降ってきたお馬鹿ネタです。
最後の陛下と夕鈴はオマケで☆
氾家の弟'sが水月さんをどう思ってるのか知りたいなー



BACK