A Midnight Music Box その後(笑)




お城に迎え入れられた後。
体中を磨き上げられ着替えさせられて身支度を終えると、リネは王と王妃の元へ挨拶に向かった。


王子に手を引かれ、現れた女性に周りは感嘆の声を漏らす。
城に到着した時とは別人のようで確かに彼女はあの夜の姫君だった。
「彼女が私の選んだ女性です。」
「初めまして、王様、王妃様。リネと申します。」
そう言って優雅に礼をとる。
一応彼女も2年前までは貴族の娘として育てられていたため作法はきちんと心得ている。
そして顔をあげ笑顔を見せただけで空気は和やかな雰囲気になった。
「さすがは王子が選んだ女性、完璧だ。」
王もただ感心するばかりだ。

「・・・貴女の名前―――リネというの?」
確認するかのように突然王妃が尋ねた。
「? はい、そうですが・・・?」
その答えを聞いた途端に「まぁ!」と王妃の表情が明るくなる。
「やっぱり! 似ているからそうだと思ったのよ!」
王妃を除く全員が不思議そうな顔で王妃を見た。
リネもよくわからない。
「貴女ダリアの娘でしょう? あの娘にほんとそっくりになったわね。」
そう言う彼女は嬉しそうだ。
「ダリア・・・お母様に・・・・・・?」
「ええ、そっくりよ。」
リネのそばまでやって来て彼女の頬に触れる。
懐かしそうな顔がリネの瞳に映っていた。


「・・・じゃあ彼女が今の当主にあたるのか・・・・・・」
「え??」
王の言葉に王子が驚いた声を出した。

彼女の扱いはどう見ても使用人だったような気が。
それなのに実際は使用人どころかあの家の正当な後継者!?

「そうよ。ダリアはあの家の女当主だったんですもの。私のただ1人の大切な妹・・・」
彼女が死んだと聞いてしばらくは立ち直れなかった。
その彼女の一人娘が今ここにいる。
嬉しさからいたたまれなくなってリネをぎゅっと抱きしめた。
「王妃さ、ま・・・」
ああ、お母様の腕の中に似てる・・・
温かくて優しくて。
「もうこんなに大きくなったのね・・・」

「・・・あれ? じゃああの女達は・・・・・・」
「お父様が新しく連れてきたお義母様とお義姉様方ですわ。あの人達はお父様が当主だと信じてらっしゃるようですけど。」
王子の疑問にリネが答える。
結婚したのは財産目当てだと継母が言っていたのを影で聞いていた。
けれど財産は「子」に受け継がれるのでダリアが死んだ時点でリネに継がれている。
それを彼女たちは知らないのだ。

「・・・父上。」
王子が王を見ると彼も相づちを打った。
「わかっている。その女どもは彼女の財産を無断で横取りしていたわけだな。その上現当主をこんな目にあわせている。
本来なら厳しい罰を与えなければならないが・・・・・・」
そしてリネの方を見る。
「リネ、そなたはどうしたい?」
「私・・・ですか? 私は別にお義母様方を恨んでいるわけでもありませんし・・・・・・」
悲しくはあったけれどどうしてやりたいとか考えた事はなかったから。
「私は今幸せですもの。だから私は何も望みません。」
なんと欲のない娘だろうと周り、王すら感心してしまった。
「・・・そういう所まで本当にあの娘にそっくりね。」
苦笑いしながら王妃はさらに強く抱き寄せる。

「―――・・・とはいえあのままあの家に住まわせるわけにはいかないな。これからは一般市民として過ごしてもらおう。
ただ元の生活に戻るだけだろうから。」
「そうですね。」
これでそれは一段落と笑って言った後、今度は少し怒った様子で後ろを向いた。
「―――母上っ! いい加減彼女から離れて下さい!!」
彼女に迷惑でしょう!と言っても聞く耳持たない様子で離れる気はないらしい。
「ヤキモチやきねぇ。けど貴方も一途よねぇー・・・」
「??」
王妃の言葉にきょとんとしてしまう。
「昔1度会った事があるでしょう? その時貴方言ったのよ「あの娘を自分のお妃にする!」って。覚えてない?」
「え・・・?」
彼女の腕の中ではリネの顔が赤くなっている。
「・・・・・・―――――!!」

カアァァ

一瞬の間があって王子の顔が耳まで赤くなった。
「あ、あれ・・・」

思い出した。
そして納得したのだ。

ああ、彼女があの時のただ1人欲しいと思った少女だったのだ、と。




END



<コメント>
後日談です。
なんか思ったより長くなってしまいました。
とりあえず王妃さまが暴走してます(苦笑)
これは読まなくても別にいいかなぁって事で「オマケ」なわけです。
「その5」で一応は終わってるわけですし続けて「その6」にしたら最後のアレが崩れてしまう気がしたので。
でもこれで全てが終わりましたvvv
あとはこの2人の幸せを祈るだけです。



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