赤翼の天使 血の救世主 その4




「・・・そうね、まずは彼女からがいいかしら?」
彼女がぴたりと指差したのは 入口の所に隠れていたジュリアだった。
「ジュリア!?」
どうして君がココに!?
「あら ダメよvvv」
ジュリアの所に行こうとしたユイナを彼女は片手をかざして制止させた。
途端彼の目の前には透明なガラス製の壁のようなものが現れる。
それはどんなに叩いてもビクともしないし、いつのまにかそれは自分の周りを囲って立方体の形を作っていた。
「貴方にはそこで見ていてもらうわ。貴方に与えるのは"孤独"。全員が死ぬのをそこで黙って見ていなさい。」
「そんな事っ!! ジュリア! 逃げろ!!」
「ふふふv ムダよ。彼女 恐怖でこれ以上動けないもの。」
足はガタガタ震え、けれど柱を支えにして立っているのがやっとな状況。
とても逃げれそうにはない。
第一逃げたとしても飛ばれてしまえばすぐに追いつかれる。

「―――ねぇ貴女、ユイの事 本当に好きなの? 貴女も彼の地位に惹かれたんでしょう?」
エイリアが問う。
違う。
ジュリアは必死で首を振るけれど恐怖で声が出なかった。
「そうなの?」
予想していた答えに、完全に見下したように見て彼女は言う。
「貴女は嘘つきだわ。私が知らないとでも思ったの?」
「・・・っ!」
貴女が話していたのを知っているわ。
彼の事は嫌いじゃないけど恋愛対象じゃなかったって。次期領主だからOKしたのよって言っていたのをね。
「―――貴女も生きている価値が無い人間ね。」
ジュリアは顔を蒼白にして震えている。
「そんなのどうでもいいじゃないか! 彼女は僕が選・・・」
「貴方は黙ってなさい! 貴方の言う事なんて関係ないわ。」
エイリアは本気だ。きっと父さん達と同じように彼女も平気で殺してしまう。


ダン!

今すぐここから出て行きたい。彼女を助け出さなくちゃ。
だけど 自分を囲むコレは何をやってもビクともしない。
手の感覚はもうほとんど麻痺していた。
「・・・安心しなさい。貴女は痛みを感じないように一瞬で消してあげるわ。」
「! エイリア!!」
けれどもう彼の声は届いていない。
手をジュリアに向けてかざす。ジュリアはそこから一歩も動けなかった。
エイリアの手の周りに白く輝く光の球が現れる。
「やめろ―――っ!!」

カッ

視界を失うほどの眩しい光が辺りを包み込み、彼の声だけが虚しく響き渡った。



燃え上がる街、人々の悲鳴と爆音。
ショックで意識を失いかけながら 彼は1つ隔たれた壁の中で全てを見ていた。
自分だけがここにいる事の悔しさ、もどかさ、悲しさ。
「お願いだ・・・ もう止めてくれ―――・・・」
エイリア―――
もう声にならない。
いっそ自分も殺された方がマシだった。



そして全ての音が消え去った頃には―――・・・

カラン

やっと開放された空間から抜け出て、ユイナは生気無く夜の「街だった」場所を歩いていた。
道も家も関係ない、そんな物はもう存在しないのだから。境界線すらわからない。
凍えるほど冷たい風が体の横を通り過ぎる。
東の空には青白く輝く巨大な満月が昇っていた。
その月を背後に瓦礫の山の上に立って彼女は微笑む。
冷たく美しい赤翼の天使。

「血の救世主・・・・・・」
大昔、1つの国を滅ぼした伝説の女神の名をユイナは無意識に呟いていた―――・・・





――― それ 本当の話?

話し終わって出た子供達の質問に青年は苦笑いする。

――― さぁどうだろう。彼以外は誰も真実を知らないからね。

さぁもう終わりだよと言って彼は腰を上げた。
残念がる子供達だが彼はまだ今夜の宿を見つけていない。
そう説明したら「ボクのウチが宿屋だよ」と1人の少年が名乗りをあげて青年の手を引く。
それから大人数でぞろぞろと、子供達と一緒に彼は宿屋に連れて行ってもらう事になった。
こんなに賑やかなのは久しぶりだ。と心の中で彼は呟く。


―――貴方に与えるのは"孤独"・・・ 永遠に独りで生きていくのよ。

ふと エイリアの声が頭に響いた―――・・・



<コメント>
なんか切るトコ間違えた気がする〜・・・ ま、いっか(オイ)
ラブラブvの欠片もない暗い話だなぁ ホント。
ただ、エイリアのユイナに対する感情が微妙〜なカンジ。
つーか この語り部の青年の正体はわかる、よね・・・?



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