華やかなる宴の舞台裏 1
      ※ 710000Hitリクエスト。キリ番ゲッター佐智様に捧げます。





 ―――我々は、日々お妃様を影から見守り、その愛らしさを語り合う会(名前は以下略)の
 メンバーである。

 吹雪吹き荒れる政務室に春を運び込み、誰も意見を言えない柳家と氾家のご子息の間を取
 り持ち、我々政務室の面々が尊敬して止まないお妃様。
 今や政務室の平穏はお妃様にかかっていると言っても過言ではない。(と、我々は信じて
 いる)


 その日も我々は休憩室に集まり、いつものようにお妃様についてを時に熱く時にゆるく語
 り合っていた。
 運良くお妃様と話せた者はどんな話をしたのか、仲睦まじい夫婦を目撃した者は陛下がど
 のような甘い言葉で愛を紡がれてそれにお妃様がどう反応されたのか。
 どれだけ話しても、不思議と話題は尽きない。


「おい。今 気になる話を聞いたんだが…」
 ひとしきり盛り上がっていたところ、遅れてきた一人が神妙な面持ちで輪に加わった。
 声を潜めて言うので、自然と皆で頭を寄せ合う格好になる。

「今度、王宮で宴が開かれるだろう?」
「…我々も参加できるあれだな。」
 一人が聞けば、彼はそれだと頷く。

 数日後の月の美しい夜に開かれる観月の宴。
 その宴には主立った大臣だけではなく、政務室で働く彼らのような若い官吏も参加させて
 もらえるのだ。
 もちろん陛下とお妃様も並んでご出席される。

「で、それがどうしたんだ?」
「実はそこでな、柳経倬殿がお妃様に恥をかかせようと画策しているらしい。」
 さらに潜められた声とは対照的に、『何だって!?』と他のメンバーは一斉に大きな声を
 上げた。

「それは確かな情報なのか?」
「ああ。さっきご本人が秘密の話だと取り巻き連中に声高に言っておられた。」
 返ってきた答えに一瞬沈黙が落ちる。
「秘密……」
「言ってやるな。本人は秘密のつもりなんだ。」
 呟いた一人の肩を叩きながら 隣の男が首を振った。

 あの柳大臣の長男にして柳方淵殿の兄。
 家柄は素晴らしいのだが、本人はいろいろと残念な人物である。
 そしてそれを自覚していないのは本人のみ。


「…まあ それはともかく。陛下に報告するべきか?」
「いや、この程度で陛下の手を煩わせるのもどうかと思う。」
 何といっても相手は柳経倬殿だ。
 命に関わるようなものでもないだろうし、小細工程度で宴に陛下の怒気を招くのも本意で
 はない。
「ここは側近の李順様にだけ報告しておいて、我々だけで対処しようじゃないか。」
「そうだな。」
「賛成だ。」
 柳経倬殿からお妃様を守るという意見は当然満場一致で可決。


「ならば私は今から李順殿のところへ行ってくる。」
 善は急げと一人が席を立つと、情報を持ってきた男も追うように腰を上げる。
「俺は引き続きどんな妨害をするつもりなのかを探ってこよう。」

「―――じゃあ、残りは今後動きやすくなるように仕事の前倒しといくか。」
「了解。」
 他のメンバーも頷きあって立ち上がった。
 休憩時間はまだあるが、こういうことなら行動はすぐにでも起こしたい。



 その後、李順から許可を得た面々は、お妃様を守るべく本格的に行動を開始したのだった。












「…なんだ、李順。面白いことでもあったのか?」
 普段から冷静であまり表情を変えない側近が微かに笑っている。
 それを見とめた黎翔が書類を渡しながら問うと、メガネを光らせた相手はさらに口角を上
 げた。
「いえ。政務室の者達は本当に優秀だと思いまして。」
 詳細は語らず、李順は新たな書類を渡してくる。
 それ以上は何も言うことはないということらしい。

「…私の耳に入れるほどのことでもないということか。」
「はい。全て彼らに任せておけば良いかと。」

 李順がそう言うのだから本当に気にすることはないのだろうと、黎翔はそのことをすぐに
 忘れた。




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2013.7.15. UP



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変なところで切っちゃってスミマセン(汗)
後半が宴当日なので長いです。

あと、視点がコロコロ変わるのでご注意下さい。
 


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