失えない 1
      ※ 111111Hitリクエストです。キリ番ゲッターイブママ様に捧げます。




 彼女を奪うな 冥府の王


 彼女は私の花嫁だ












 目の前で起きた光景は今も目に焼き付いている。

 彼女は矢を背に受けた。
 あともう少し矢がずれていたら夕鈴は確実に死んでいた。


『夕鈴!!』
 崩れ落ちる身体を受け止め、彼女の青白い顔を見て 全身から血が引くのが分かった。

 何度名前を呼んでも目覚めない。
 このまま失ってしまうのかと、閉じたままの目に恐怖を感じた。
 もし彼女を永遠に失えば、私は壊れてしまう。


 私はこの日を、この時を、この先忘れることはないのだろう。
 そうして一瞬でも目を離してしまった自分を一生悔いるのだろう。


 我を失いかけた思考で辛うじて浩大に刺客を捕らえることだけを命じ、あとは夕鈴のこと
 しか考えられなかった。



 ―――あれから3日。まだ彼女は目覚めない。













「李順。」
 側近を呼んで、黎翔は最後の書類を机上に放り出す。

「終わらせたぞ。これで文句はないな?」
 それを一瞥した李順が深い溜め息をついた。

 ―――"完璧に終わらせた"仕事を目の前にして。
 これで私を足止めするものは何もなくなる。


「1週間分の仕事を3日で… 読みが甘かったですね。」
 それだけの時間があれば冷静なられると思っていましたが…と、李順が小さく零すのが聞
 こえる。
 それを内心で嘲笑った。


 1週間? そこまで待てるはずがない。
 今日まで待ってやっただけでも私にしては気が長い方だと思うがな。

 …これ以上待たされたら自分でも何をしてしまうか分からなかった。


 視界を赤く染めた感情は今も消えてはいない。
 むしろ暴れる時を待ってじりじりと迫ってきている。

 …飢えた狼は今にもここから飛び出しそうだ。



「お前の都合は聞いていない。―――弓を射た男に会わせろ。」
 その瞳を見た李順の顔が青くなる。
 今の自分はそれだけの感情を露わにしているらしい。

 当然だ。
 私の大切な花を―――夕鈴を、殺しかけた男にやっと会えるのだ。

 どう殺そうかと考えている。
 どうすれば、あの男に地獄以上の苦しみを与えることができるのか。


「今すぐだ。聞けないのか?」
 だったら今すぐお前も切り捨てる と。
 邪魔立てをするならば、たとえ誰であろうと容赦はしない。

「……分かりました。」
 殺気を隠そうともしない狼陛下を前に、李順は渋々要求を飲んだ。






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2011.11.10. UP



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短いですが、視点が変わるので分けます。
2は李順さん視点ですが…ちょっと痛いかも?なので注意してください(汗)
まあほのぼの字書きが書くものという時点で、その程度でしかないですが。
 


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