※ 220000Hitリクエストです。キリ番ゲッターともりゅう様に捧げます。
      ※ ちなみに2人は結婚してる前提の未来話です。お子様'sは10歳&8歳くらい?




「…?」
 不思議なくらい静かだなと思っていたら、部屋の隅で仲良く頭を付き合わせている子ども
 達を見つけた。
「あんなところで何をしてるのかしら?」


 いつ見ても我が子達は本当に仲良しだ。
 2人はいつも一緒で、喧嘩しているところも見たことがない。

 浩大なんかはそれにすごく不思議がっているけれど、夕鈴からすれば微笑ましいとしか感
 じない。
 兄妹にしては仲が良過ぎると思うこともたまにはあっても、それを心配するのはもっと後
 でも良いだろうと思う。

 年相応になれば家族よりも大切に愛しく思う相手が現れるだろうし。
 だって…青慎(おとうと)第一だった自分でも、あの人と出会うことができたのだから。




「何をしているの?」
 聞きながら2人の頭の上から覗き込んでみた。
 けれどそこには特に何もない。何かを書いていたわけではないらしい。

「何でもないよ。」
 凛翔が本当に何でもないことのようにさらっと答えると、
「ひみつなの♪」
 鈴花も顔を上げて、悪戯でもしているかのような笑顔で言った。

「それ 言ったら意味ないよ。」
「あ、そっか。」
 兄に指摘されて気づいたらしく、鈴花はしまったという顔をする。
 どうやら子ども達には可愛い隠し事があるらしい。

「…まあ良いわ。」
 華南が何も言わないなら悪いことをしているわけではないのだろう。
 そういうところ、彼女は厳しいから。


「あまり周りに迷惑をかけちゃダメよ。」
「「はーい」」
 元気の良い返事にくすりと笑って、夕鈴は2人の傍から離れた。









「シーッなのよ。」
 クスクスと鈴花が笑う。
「母上にも父上にもナイショだ。」
「うんっ」

 仲良し兄妹の可愛い可愛い隠し事は、密かに(?)順調に進められていた。















    記念日 1
「次の書類です。これら全てに決裁をお願いします。」 箱にぎゅうぎゅうに詰め込まれた書簡が机上にどさりと置かれる。 「…まだあるのか。」 さすがに疲れた顔で黎翔はそれらを横目で見た。 宰相が目を通し 通ったものだけがここへは来るが、それでもその量は毎日一向に減らな い。 「忙しいのは今日までですから。これが終われば明日はゆっくりできますよ。」 「……だったら明日は後宮に篭る。」 「どうぞご自由に。…終われば、の話ですが。」 珍しく許可の言葉が返ってきたかと思えば、彼は最後に一言付け加える。 確かに、今日中に終わるかどうか分からない量だが。 「相変わらず容赦がないな…―――"李順"?」 皮肉を込めた目で黎翔は決裁を持ち込んだ張本人を見上げた。 相手の表情は変わらない。 「仕事中にそちらで呼ばれるのは珍しいですね。」 「今は2人だけだ。気にすることでもないだろう。」 「―――陛下?」 話し声が聞こえていたので、夕鈴は伺うように顔だけ覗き込む。 そこには陛下と李順さんの2人だけがいて。 「夕鈴」 ぱっと顔を明るくする彼にホッとして、了承の言葉と同時に中に足を踏み入れた。 「お仕事の方はいかがですか? 小休憩にと甘いものとお茶をお持ちしたんですけど…」 「ありがとう」 その少し疲れた彼の様子に、タイミングは間違っていなかったと安心する。 それから手慣れた様子で空いている卓に持参した茶器類を広げた。 「李順さんもご苦労様です。」 2人分のお茶を用意し始めると「お構いなく」の返事。 それでも渡すとお礼と共に受け取ってもらえる。―――さすがに座るのは、勤務時間中だ からと断られてしまったけれど。 「李順が容赦なくて今日はいつ帰れるか分からないよ…」 陛下の傍にお菓子の籠を持って行くと、お菓子を取る代わりに腰に抱きつかれる。 小犬な彼の縋り付くような仕草に余程疲れてるんだなと思って、夕鈴は特に抵抗もなくそ の行為を受け入れた。 陛下は相変わらず机仕事が嫌いらしく、それを宥めるのも夕鈴の役目だ。 とりあえず今は甘い物でも口に放り込めば少しは落ち着くかしらなどと考える。 …もう少し力を緩めてくれたらそれもできるのだけど。 「私は別に、明日早朝から仕事をされても構いませんよ。」 さすがは李順さん、やらなくて良いとは絶対言わない。 「それは嫌だ。明日は夕鈴と過ごす。」 「? はい?」 いきなり自分の名前が出てきて驚いた。 きょとんとすると、巻き付いたままの陛下が見上げてにこりと笑う。 「今日の分が終われば明日は1日お休みなんだ。」 「そうなんですか。」 (晴れたらお散歩、とかかしら?) だったら明日は朝からお菓子の手作りでもしてみようかなんて。 そんなことをのんびり考えていたのだけど。 「夕鈴」 急に甘く艶を増した声に呼ばれてどきりとする。 次に目が合った彼は、狼陛下の方の色気たっぷりの笑顔で。 「っ!?」 思わず逃げる体勢になった夕鈴の腰は、見越した彼からがっちり掴まれていて離れない。 近くなった紅い色に心臓がどくりと脈打つ。 「―――明日は1日閨に篭ろうか。」 「っっ」 冗談めかした言葉の裏に本気を感じ取ってかっと熱が上がった。 この人の后になってだいぶ経つのに、子どもももう2人もいるのに… いつまで経ってもこの人の色気の前には平静でいられなくなる。 勝手に身体中の熱が上がって、その熱に翻弄されてしまう。 悔しいけれど今だ勝てずにいた。 「―――終わればですね。」 「しつこいぞ。」 目の前の光景に露とも動揺しない李順さんから冷静なツッコミが入り、それに陛下は睨ん で返す。 意識が逸れたその隙に腕の拘束から抜け出して、その手が追いかけてくる前に―――口に お菓子を放り込んだ。 「むぐ」 おそらく名前を呼ばれたと思うのだけど、言葉にはならずに終わる。 自分の代わりにお菓子の籠を掴ませて夕鈴はさらに逃げた。 「……終わったら、いらしてどうぞ。寝てるかもしれませんけど。」 不満げな瞳に訴えられて、今できる精一杯の虚勢を張る。 つまり、了承の答えを。 「―――出来る限り早く戻る。」 またも無駄に色気のある貌と声で、やる気に満ちた答えを返されて。 夜までに覚悟を決めるべきかと、夕鈴は思わず逃げそうになる気持ちを必死で隠すことと なった。 →2へ 2012.3.12. UP
--------------------------------------------------------------------- リクに反して何故か夫婦がいちゃつきだしました(笑) ので、このまま夕鈴視点で最後までゆきます。


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