scene1:庭園



 2人で後宮の庭園を歩く。
 後ろには侍女達が付き従っていて、少し離れて付いてきていた。

 季節毎に庭園は色を変える。それはそれぞれに良さがあり、趣がある。
 そして今は鮮やかな色彩の花々が咲き、見る者の目を楽しませてくれていた。



「綺麗ですね…」
 夕鈴は花の一つ一つを手に取り顔を寄せる。その表情はとても楽しげで思わず顔が緩みそ
 うになった。

 夫婦演技は今も昔も変わらない。
 ただ、2人きりの方が甘いというのは誰にも内緒だ。

 僕は別に公表しても構わないと思っているけれど、夕鈴が嫌がるから内緒にしている。
 何を思って隠そうとしているのか分からないけれど、不安も心配も必要ないと言いたい。
 僕にはもう、君を手放すなんて考えられないんだから。


「あら、あんなところにも花が…」
 少し高い位置に咲く白い花を見つけて、夕鈴は珍しそうにそれを見上げる。
 気に入ったのか、彼女は立ち止まってその花をじっと見ていた。
 黎翔より頭一つ分小さい夕鈴には見えにくそうだ。
 ―――そう思ったら、その後の行動は早かった。

「近くで見たいか?」
 言うが早いか軽々と持ち上げる。
「きゃっ!?」
 突然視界が高くなってビックリした夕鈴は、咄嗟に黎翔の首にしがみついてきた。

 ふわりと掠めるのは花の香りではなく、彼女のやわらかな香り。
 これがわざとなら簡単に拒めるのに、彼女はいつも無意識に煽るから困ってしまう。
 このままどこかに連れ去ってしまいたくなるのを、どれだけ我慢していると思っているの
 か。

「陛下ッ」
 こちらの昏い欲など知らないままに、彼女は真っ赤な顔で抗議の声を上げる。
「驚かせたか。」
 そんな彼女に謝りながら笑った。



 腕の中の可愛い愛しい妃。
 絶対に手放せない。


 君に永遠をと誓いたい。

 そうしたら、君はなんて答えるかな…?




→四阿へ進む


2011.7.31. UP



---------------------------------------------------------------------


まあ、基本はいつも通りですよね〜
結婚しようが子どもができようがこの2人は変わらない気がします。



BACK