☆はっぴい・はろうぃん☆ 選択肢3『小犬の夜話ーこいぬのよばなしー』




『どれにする?』
「3、で お願いします・・・」
 楽しげな陛下を前にして、何とか答えを絞り出す。


 離宮の時も朝まで一緒だったし!(酔って寝てたから覚えてないけど)
 その時も何もなかったし!(ちょっと複雑だけど・・・)

 だからきっと大丈夫!…なはずッ






『お帰り、夕鈴。』
 夕鈴が夜着に着替えて寝室に戻ると、陛下はすでに寝台に腰掛けて待っていた。
 もちろん陛下も夜着で、寝台という場所でのあまり見慣れない姿にどきりと心臓が大きな
 音を立てる。

『そんなに緊張しないで。』
 夕鈴がそばに来ると、先に陛下が夕鈴の寝台に潜り込む。
 ギシッと寝台が音をたてて、また心臓が跳ねた。

『夕鈴、僕寒いから、早く入って・・・』
 掛け布団を捲り、夕鈴に隣に眠るよう促す。

(陛下に風邪をひかせるわけにはいかないわ・・・!)
 そう思いながらも、ちらりと鬼の上司の顔が掠めた。
(これがバレたらどうなるのかしら・・・)

『夕鈴?』
 躊躇していた夕鈴を陛下の柔らかい声が再度呼ぶ。
「・・・・・・っ」
 ハロウィンだから、いたずらだから仕方がない。
 顔を真っ赤にしながら、意を決して陛下の寝台へと滑り込んだ。



 潜り込んだものの、早速夕鈴は後悔していた。
(陛下の顔が、ち・・・近い。近すぎる・・・・・・!)

 促されるままに、寝台に二人。
 片腕で、自身の頭を支えて、夕鈴を見下ろすように隣で寛ぐ陛下。
 吐息が顔に掛かるほどの近さに顔が赤らむ。

『夕鈴、そんなに潜って苦しくない?』
 くすりと 陛下が子どもを見るような瞳で笑った。

 恥ずかしくて、恥ずかしくて。
 陛下から逃げたくて、布団の中に潜り込んでいたのだ。

 目深に被った布団から瞳だけを覗かせて、陛下の方をちらりと見る。
 顔が熱いのは潜っているせい・・・だと思いたい。


「!?」
 突然陛下の腕が伸びてきて夕鈴が縋り付いていた布団を剥がす。
 それを肩の位置に掛け直した陛下は満足そうな笑顔を見せた。
『これでいい。』
 ぽんぽんと掛け布団を叩いた手がそのまま肩を引き寄せる。

「へいか・・・!?」
『んー?』
 身体にかかる腕の重さ、密着した身体に夕鈴は慌てた。
 けれど陛下は全く気にしていないようで、さらさらと流れる夕鈴の髪で遊ぶ。

『お嫁さんと添い寝って憧れてたんだぁ』
 ふわふわと踊るような声。

『夕鈴、あったかい。』
 綻ぶ陛下の嬉しそうな笑顔が目の前にある。

 だんだんと心地よいぬくもりが布団を包んでいくのを、夕鈴も感じていた。


(・・・・・・まあ、いいか。)
 夕鈴もついには抵抗を諦めて力を抜く。


 ハロウィンのいたずらだもの。

 今夜だけ、今夜だけだから・・・・・・





・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




『夕鈴、もう寝た?』
「・・・・まだです。」
『まだなの? 夕鈴、僕ここにお泊りしちゃうよ。早く寝ようよ!!!』

「〜〜っ 陛下が、さっきから質問してくるから、眠れないんです!」
 はあぁ〜と夕鈴は呆れた深い溜め息を零す。

「もう、コレで何度目ですか?」
『だってお嫁さんのと一緒に添い寝だなんて・・・』
 嬉しさを隠しもせずに、陛下はニコニコと笑顔を崩さない。
『夕鈴、あったかいし、抱き心地いいし、かわいいし・・・』
「だぁぁあ!! それ以上は、言わないで下さいッ」

 そこでポッと頬を赤らめたりとかしないで欲しい。
 こっちも変に意識してしまう。

「寝ますから! 陛下も早くお部屋に戻ってお休みください!」
『ええーーっ 夕鈴、追い出すの?』
 抗議の声を上げると、途端不満顔になった陛下が口を尖らせる。
『夕鈴のお布団、暖かくて気持ちいいから出たくないなぁ。・・・このままじゃダメ??』
「ダ・メ・で・す。自分の布団で寝てください。」
 捨てられた小犬のような顔を見せられても夕鈴は揺るがない。
「そんなうるうるした瞳をしても、ダメなものは、ダメなんです。」

 これではいつまで経っても二人とも眠れない。
 さらにこれで明日の仕事に支障が出てしまったら、李順さんになんて言われるか。
 ・・・いや、それ以前にバレてしまった方が大変なのだけど。

「もう十分温まりましたから、陛下はお部屋に戻られたらいかがですか?」
 確か、寒いから添い寝という話だったはず。
 目的はすでに達成されているのだから、陛下がいつまでも添い寝している理由はない。
 けれど陛下は納得がいかないらしく、ぷぅ・・・と頬を膨らませた。
『それは、嫌だ。これは、ハロウィンのいたずらなんだから。』
 夕鈴の肩に乗せられていた手に力が篭る。
『君が選んだいたずらだよ。夕鈴。君が眠るまでぼくは、ここにいる。』

(そこで引き寄せるなーーー!)
 さらに近づいた距離に、夕鈴の頭は沸騰寸前。
 ここで拒んだら、さらにどうなるか分かったものじゃない。

「〜〜〜〜っわかりました。わかりましたから、もう質問しないでくださいね!」
『うん♪ わかった。もう質問しないよ。』


・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・数刻後


『夕鈴、もう寝た?』
「・・・・まだです。」 




→後書きへ



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きっと朝までエンドレス(笑)
添い寝してるのに健全ですね〜 小犬だからかな?

何気に、2と3のタイトルは対になってます☆

2012.12.9. 再録



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