第二部『星祭り』




☆本誌11月号本誌まるごとストーリー・がっつりネタバレ含みます。
 コミックス派の方は、Uターン推奨。


 

 ほろ酔い、輝き煌めく星離宮の宴
 

 篝火が爆(は)ぜる 
 
 幾つものオレンジ色の灯火が輝く
 


 昼間の出来事がまるで嘘だったかのように、神事は滞りなく行なわれた。
 



 初めて星祭りに参加した夕鈴は、緊張しつつも完璧に妃の演技を続けていた。
 時折、昼間の醜態を忘れたいと思いつつ顔を赤らめるも、陛下の隣で妃としての顔を崩す
 ことなく毅然として、粛粛と行なわれる神事を見守る。
 


(・・・そういえば、陛下も初めてなんだっけ。)
 狼陛下は一体どんな顔をして見ているのかしら?なんて。
 ちょっとだけ好奇心が湧いてくる。
 
 それに負けてちらりと隣の陛下の様子を窺がうと、運悪く視線がばっちりあってしまった。
 
 ぼぼぼっ・・・・
 
 昼間の清めの禊(みそぎ)の最中(さなか)に刺客に襲われ、陛下に助けられた出来事を思い
 出してしまい、顔が火照る。
 恥ずかしさで身体まで熱くなった気がした。・・・忘れられるものなら忘れてしまいたい。
 ますます、思い出して顔が赤くなる。
 対して陛下は、まるで何事もなかったかのように夕鈴に爽やかに微笑んだ。
 

(気にしてるのは私だけなのかしら・・・)
 いつも通り、陛下は何も変わらない。
 なんだか、一人で陛下を意識しているもの馬鹿らしくなってきた。
 視線を前に戻して、分からないようにそっと息を吐く。
 
(今日は、何だか疲れたわ・・・)
 
 昼間の出来事により、物憂い疲れが夕鈴を襲う。
 どこか遠い気持ちになりながら、滞りなく進む神事を見つめていた。
 


 ―――けれど、その様子は、何も事情を知らぬ者達には別の意味に取られた。
 

 ほぅ、と、どこからともなく感嘆の溜め息が漏れる。
 妃のその物憂げな柔らかなまなざしは、星離宮の人々の目を楽しませていた。
 
 普段とは違い、薄い色素の金茶の髪を、唯一 両耳のひと房を残して一つ纏めにして結い
 上げてうなじを見せている。
 高い位置で結い上げた髪は、四つの髷を作り、まるで胡蝶が羽を広げたかのような髪型に
 仕上げた。
 その髪に、胡蝶意匠の金冠や宝玉の簪・・・金歩庸を挿し、両脇の耳の高い位置に星離宮
 で咲いていた紅色の艶(あで)やかな一重の花簪を二輪ずつ・・・
 

 あまり派手な化粧は好まない妃にあわせた薄化粧。
 その姿は、星祭りにふさわしい―――清らかな乙女の姿。
 
 物憂げに煙(け)ぶる 大きなはしばみ色の瞳、
 淡く物知らぬ乙女のように色づいた唇、
 オレンジ色の篝火に金の耳飾りが揺らめき煌めく。
 
 祭りの様子を眺める妃は、どこか儚げで、庇護欲を駆りたてる・・・
 
 華奢な身を包むのは、陛下と対の紅染めの衣。
 それには神事のために金糸・銀糸で縫い取り、豪華な刺繍が施されていた。
 下の真っ白で清楚な単衣とのコントラストが映え、さらにその上からは薄紅色の薄絹の肩
 掛けを羽織る。
 
 揃いの衣装で立ち並び、寄り添う王と妃。
 


 ―――星祭りの宴
 
 妃と睦みあう王は始終ご機嫌で、妃を見つめては愛を囁く。
 対する妃は、初めての星祭りに緊張の色が漂い、疲れを隠そうともしないほど疲労困憊の
 様子。
 何も考える余裕がないほど王に寄り添い王の言葉に耳を傾けるのだった。
 
 耳元で、囁きあう王とお妃の仲の良い姿。
 はたからは、いつもの睦言にしか見えないそれは、二人だけの甘い秘密の約束事。
 

 一対の絵のようなその姿は、仲睦まじい様子が末席からも見て取れて・・・
 噂通りの寵愛とその様子に、人々の注目を浴びるのだった。
 
 そして王と妃の秘密は、人々に知られることはなかった。




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てなわけで、
ベース=さくらぱんさん
便乗=かなめ
で、今回もがっつり遊んでおります☆

2012.12.22. 再録



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