『秘色 ーひしょく Wー』




 ふんわりとして柔らかそうな、触れたくなる君のきめ細やかな白い肌。

 その柔らかさを試したくなる。
 触れたくて・・・つい・・・抱きしめたくなる。


 手を伸ばして・・・・けれど、すぐに引っ込めた。
 すごく苦しそうな夕鈴に気づいたからだ。



『どうした?夕鈴。』
「胸がくるしくて・・・ここが・・・」
 夕鈴の華奢なその白い指先が開いた胸元を押さえ、彼女は悩ましげな表情で黎翔に訴えて
 くる。


byさくらぱん様
 ※ 50%縮小サイズです。原寸はクリック。



 気がつけば、すぐ目の前に夕鈴がいて・・・
 潤んだ瞳で見上げる彼女の その肩に僕は手を触れていた。


「陛下が来てくれて、嬉しいです。」
 頬を薔薇色に染め上げて・・・・ 切なげに、ぽつりぽつりと彼女が語(かた)りだす。
「今日ほど、陛下をお待ちしたことはありません。」

 震える唇は、僕への告白ゆえと勘違いしたくなる。
 言葉だけ聞いていると、愛の告白のようにも聞こえるそれ。
 嬉しすぎるその言葉に胸が高鳴るのを止められない。

 ・・・・・でも何かがおかしい。
 違和感に、僕の理性が警鐘を鳴らす。

 だけど、

 僕は君に近づいていいのだろうか?
 君の傍に・・・もっと・・・もっと近づいて、君に触れてもいいのだろうか?
 次第に近づいていく君との距離に、くらくらと眩暈がする。


「陛下・・・衣服を緩めてくれませんか。」
『夕鈴・・・・』
 今夜の君は、なんて大胆なんだ。

「苦しくて・・・・」
 無敵にかわいい。
 ――――愛しい君。

 そのまま夕鈴は僕の腕にしな垂れる。
 君の魅力に逆らえない僕は、このまま君を手に入れても良いのだろうか?

 引き寄せた腕に力を込めて、君に口付けたい。
 高鳴る鼓動が、強く僕の胸を打つ・・・

 ばくばくと脈うつ心臓の音。高まる緊張感。
 どんな政局でも、こんなにも緊張したことなど無い。

「へいか・・・」
『・・・っ』
 熱い吐息と共に、甘く濡れた声が僕を呼ぶ。
 そこまでが限界だった。


 警鐘を鳴らし続けていた僕の理性も霧散する。
 君が望むのなら、僕はもう我慢なんてしやしない。
 
 ―――無性に危険な匂いのする君に、触れたくてしょうがない。


 気付いたら君の唇を奪っていた。

 大きなはしばみ色の瞳が驚きで見開かれ、僕を射る。
 けれど、止められなかった。

 君との口付けは、とても甘くて――――
 甘く柔らかな唇を全部味わいたくて・・・


「・・・・んんっ・・・」
 灯火に煌めきながら零れ落ちる美しい涙が、頬を伝っていく様を視界の端で捉える。
 ――――微かに夕鈴の抵抗を感じたけれど、それを無視して僕は更に口付けを深くした。


 なんて、甘くて砂糖菓子のような君との口付け・・・

 僕は今を忘れて、君に夢中になっていく。


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『夕鈴・・・?』
 気がつくと夕鈴は、僕の腕の中で―――――気絶していた。 




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あーあ、陛下我慢できなかった(笑)

今回の夕鈴のイラストはさくらぱんさんからです☆
載せちゃって良いよね〜
※ 1/19)イラスト差し替えましたー

2013.1.14. 再録



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