お宝部屋v




 某日 〇歳の誕生日を迎えた直後、SNSにメッセが届きました。

 なんとなんと・・・!
 るる様から誕プレいただきましたー!!
 しかも挨拶一番乗りで・・・ ありがとうございます!

 そしてプレゼントの中身は・・・『夢のような夢の話』の小説ですよ!
 この設定を好きだと言って貰えて嬉しいですー

 『夢のような夢の話 -夕鈴の夢-』

 ↑これの対になるお話です。
 私が割愛した陛下と夢夕鈴のお話。そして陛下視点。
 私が書かなくて良かった! こんな素敵なお話にしてくださるなんて・・・!

 というわけで、ぜひお楽しみください!
 綺麗に対になってて本当に凄いんですよ!!(≧∇≦*)




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「お妃様、お妃様」
「そろそろ陛下がいらっしゃいますわ。お目覚め下さいませ」
 控えめに掛かる声に、夕鈴の意識は浮上した。

 (―――あれ?私、寝ちゃってた?)
 溜まった洗濯物を綺麗に終らせて、一息吐こうと座ったまでは覚えている。
 ぽかぽかな陽気がとても気持ち良くてそのままつい転寝してしまったのだろうか。

 何だか記憶が曖昧でちゃんと思い出せなくて、夕鈴は目を擦った。
「大丈夫でございますか?」
 尚もぼんやりする夕鈴を、心配そうな顔で覗き込む綺麗な女の人。
「・・・え?」
「どこかお加減の悪い所でも―――どうしましょう、すぐ陛下がいらっしゃいますのに」
「ご気分が優れないのなら、陛下には使いをお出しして部屋へ戻られた方が―――」

 おろおろとする彼女達を前に、夕鈴は状況が飲み込めずに戸惑っていた。
 目が覚めたら見知らぬ女性に心配されていたのだ。
 不思議に思うなと言う方が無理な話である。
 しかも。

 (陛下?お妃様?―――何の話・・・?)
 普通に考えれば陛下とは王様の事で、お妃様はその奥さんの事だ。
 だが普段聞き慣れないほど遠い存在を出されても、全くぴんとこない。
 周りをきょろきょろと見回しても彼女らが話し掛けているであろう対象になる人物が他に
 いる訳でもなく―――見回した事によってその景色も尋常ではない事に気付いてしまって。

「あの―――ここ、何処ですか・・・?」
 夕鈴は呆然としたまま、そう聞いたのだった。




 相変わらず忙しい政務の合間に何とか時間をひねり出し、黎翔は夕鈴の待つ四阿へと足早
 に歩いていた。
 彼女から遠慮がちな誘いを伝え聞いたものの、思いの外政務が長引いてしまったのだ。
 仕方のない事だと判っているが、気は急くばかり。

 きっと夕鈴との一時を過ごせばこの心の澱も消えてゆくだろう。
 彼女といれば嫌な事も忘れていられる。
 元気で可愛らしくて恥ずかしがりな、可愛い兎。
 思い浮かべただけで心にほんわりと温かさが広がってゆく。

 (こんなに私の心に入り込んでしまうとは、本当に困った妃だ)
 黎翔が内心の想いを隠しきれず苦笑した時。
 少し離れた場所から慌しい気配を感じ取った。
 それは夕鈴が待っている筈の四阿がある方角で、どうしたのかと訝しむ。
 だが緊迫感は感じられず、ただ戸惑うような騒がしさである。
 (―――?)
 この後宮で騒ぎなど珍しい。
 そう思いながら四阿まで辿り着くと、待っていたのはおろおろする侍女らと、侍女の倍は
 狼狽えた夕鈴だった。

「何事だ」
 気配で感じた通り、場が荒れているでもなく誰かが怪我をしている訳でもなく。
 何があったのかと素朴な疑問を抱きつつ、侍女らの手前冷たい声で問い掛ける。
 彼女らは揃って黎翔へ振り返り、一斉に声を上げた。
「陛下!」
「陛下!」
「黎翔!」

「――――――え?」

 ・・・一瞬で、空気が凍りついた。
 夕鈴は今、確かに『黎翔』と呼んだのだ。
 ―――いつか夢で見た、幼馴染の夕鈴のように。

「お、お妃様・・・」
「いくらお妃様でも、陛下をそのようにお呼びするのは・・・」
 黎翔が目を見開き固まっている間にも侍女らは青褪め、必死に夕鈴を諌め始めた。
 確かに普通であれば、いくら妃と言えども王を名前で呼び捨てになどしてはならない。
 不敬罪で処罰されてもおかしくないだろう。
 勿論こんな事で夕鈴を咎めるつもりはないし、むしろ嬉しさが込み上げる程なのだが―――
 それにしても、今までの彼女から考えればあり得ない。

 混乱している隙に夕鈴は困った顔をして黎翔の陰へ隠れるよう擦り寄ってきた。
 これも普段の彼女からは少々考え難い行動である。
 まるで知らない人間を見るかのような目を侍女へ向けているし、不安そうに黎翔を見上げ
 てくるのだから。

「も、申し訳ございません、陛下。お妃様は少しお眠りになられてまして・・・きっと、
 夢でも見ていたのですわ」
「そうです!お加減が悪いのかもしれません。それで、あのような事を・・・」
 侍女らは狼狽えつつも夕鈴を庇わなければならないと思ったのだろう。
 いくら寵妃とは言え、夕鈴が来る前の後宮を知っているのだ。
『彼女らの知る狼陛下』なら、無礼を働き逆鱗に触れた妃を切り殺す事もあるかもしれな
 いと考えても不思議ではない。
 だが。

「妃は私の願いを聞き入れただけだ。恥ずかしがって二人の時しか呼んではくれなかった
 のだが―――」
 黎翔はそう侍女へ告げると、夕鈴を抱き寄せた。
 頭へ軽く口付けるのも忘れない。
「ちょ、何言っ・・・むぐっ」
 文句を言い始めた彼女の頭を自分の肩口へ押し付け、口を塞ぐ。
「下らんことを言い出す輩もいるだろう。他へは漏らすな」

 ―――もし漏れたら、どうなるか解っているな。

 言外に含みを持たせた言葉は、明確に伝わったのだろう。
 腕の中でぴくりと体を強張らせた夕鈴を抱き締める力を強め、黎翔は青褪めてしまった侍
 女を身振り一つで下げたのだった。




 侍女らの気配を感じられなくなった後。
 黎翔は未だもがいていた夕鈴を開放した。
 とは言え、少し力を緩めただけである。
 彼女は苦しかったのかぜえぜえと呼吸を繰り返してから、元気に文句を言い始めた。
「何すんのよ!大体、あの人達は誰?黎翔の知り合いなの?それに、ここ何処なのよ!何
 で私はここにいるの!?」
「・・・取敢ず、ちょっと落ち着いて。あんまり大きな声出すと、人が来ちゃうよ?」

 ―――実は黎翔とてまだ驚いているのだ。
 いつもとは大分違う彼女に。
 ただ一つ、まさかと思う考えが頭にあるだけの話。
 そしてそれは、夕鈴と話す内に次第に確信へと変わってゆく。
「だって・・・!」
 尚も何か言い掛けた彼女を抱き上げ、椅子に座った自分の膝へ乗せて。
 いつもの夕鈴なら顔を真っ赤にしてしまう所だ。
 でもこの夕鈴は、ただ暴れただけ。
「何すんの!」
 ―――とても恥ずかしがっているようには見えない。

「夕鈴はさ、どうしてここにいるのか判らないんだよね?」
「そうよ。先刻からそう言ってるじゃない!」
「じゃあ、来る前は何処にいたの?」
「・・・え?」
 離れようとじたばたしていた彼女は、黎翔の問いに考え込んでしまった。
 混乱が過ぎてすぐに思い出せなかったのだろう。

「えっと・・・今日は朝から良いお天気だったから、家で洗濯してて―――干した後に、
 一息吐いて・・・」
 その言葉に、やっぱりそうかと妙に納得してしまう。

 彼女の幼馴染として生きた、あの夢のような夢。
 この夕鈴は、あちらの彼女なのだ。
 自分には絶対手に入らない、あの幸せの中の。
 でも。

「じゃあ、これは夢だよ。君は疲れて眠っているんだ」
「・・・夢?」
「うん、そう。目を閉じてごらん。きっと元の場所へ戻れるよ」
 夕鈴は少し疑わしそうに眉を顰めたが、素直に目を閉じた。
 そしてそのまますぐにすやすやと穏やかな寝息をたて始める。

「そちらの夕鈴は返そう。だから―――私の夕鈴を返してもらおうか」




 むずがるように目覚めの予兆を迎えた夕鈴に、黎翔は柔らかい笑みを浮かべた。
 あの夢は然程長い間悪戯をするのではない。
 だから、帰って来てくれたのだと思って。

「目覚めたか?」
「ッ!?」
 途端に真っ赤になり狼狽える夕鈴に、ほっと息を吐く。

 確かにあの夢は、自分には手に入らない夢。
 でも恥ずかしがる夕鈴はやっぱり可愛くて―――壁があっても異性と認識してくれている
 であろう彼女が愛おしくて。
 そう考えれば、結局自分には何かしら障害が残っているのだと苦笑が浮かぶ。

 黎翔はぎゃあと叫んで身を引こうとした夕鈴を強く抱き締めた。
「君が待っていると聞いて四阿に来たら、可愛らしく寝顔を見せていたからな。誰にも見
 せないよう囲っていたのだが」

 侍女とのやり取りは教えない。
 あれは束の間叶えられた、本当の夢。
 いつかは現実になって欲しいと願っているのだから。

「すっ、すみません!」
 慌てて謝る彼女へ優しく微笑んで、役得だから構わないと告げる。
 そして不意に興味が沸いた。
 夕鈴はあの夢をどう思ったのかと。

「どんな夢を見ていたんだ?」
 自分と同じなら、夕鈴は入れ替わっていたのだろう。
 あちらの彼女と。

 僕にとっては夢のような夢。
 でも、君には?

 僕といつも一緒にいるのは嫌じゃなかった?
 仕事とは関係なく僕が隣にいる世界でも、君は笑っていてくれたの?
 もしそうなら―――僕は、僕の君と夢を見られるかもしれない。

「えっと・・・」

 どうか嫌がらないで。
 僕を拒絶しないで。
 君と生きて行きたいと願うこの心を、受け入れて。
 祈りにも似た想いを乗せて、夕鈴を見詰める。

 夕鈴は複雑そうな表情で少し考えた後、はっきりと答えた。

「・・・夢のような、夢でした」


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ついでにCM(笑)


  ※下町部屋にも整理部屋にも置いてますが、ここにも置いておきます☆
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    夢のような夢の話  2011.9.11.UP
     →日記再録 2011.9.25.&2011.10.10.UP
     →拍手再録 2012.5.11.UP
    夢のような夢の話 -黎翔お仕事編-  2012.6.3.UP
    夢のような夢の話 -夕鈴バイト編-  2012.8.6.UP
    夢のような夢の話 -小ネタ集- 下町編/王宮編  2012.8.29.&9.3UP
     →オマケ 2012.9.3.UP
   夢のような夢の話 -出会い編-  2013.5.7.UP
   夢のような夢の話 -夕鈴の夢-  2013.6.23.UP
 ・・・・・・・・・・・・・


2015.2.15. UP



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